桜井敏雄

桜井敏雄：日本の最後の演歌師

桜井敏雄（さくらい としお、本名：窪田邦夫）は、1909年2月15日に東京市下谷区、現在の台東区三ノ輪に生まれた、日本の伝説的な歌手である。彼は独特のスタイルである「ヴァイオリン演歌」を確立し、そのスタイルで数々の名曲を歌い上げた。彼の音楽は日本の伝統的なメロディーと、彼自身のヴァイオリン演奏の技術が融合したもので、彼は名実ともに「最後の演歌師」として知られるようになった。

来歴と初期の活動

桜井は骨董商の家に生まれ育ったが、高等小学校を卒業した後、1923年に発生した関東大震災を機に家業を離れ、石田一松に弟子入りする。その後、約3年間の修業を経て、独立を果たし、東京を拠点に演歌師としてのキャリアをスタートさせた。初めの頃は、縁日などでヴァイオリン演歌を奏でながら、歌手としての基盤を築いていく。

桜井は、演歌師活動の中で、多くの若い歌手を支援し、上原げんとや岡晴夫を育てたことで、後に「育ての親」としても知られるようになった。これらの若手歌手がその後、演歌界で名を馳せるにつれて、桜井自身の名声も高まっていった。

戦時中と家族の喪失

第二次世界大戦中、桜井は兵役に就くが、戦後は厳しい現実に直面する。復員後、妻や両親を相次いで失い、一人で4人の子どもを育てることとなった。家族を失った悲しみの中で、彼は演歌の道を貫き続け、その音楽が彼自身と子どもたちにとっての支えとなった。

受賞歴と活動の幅

彼の才能は多くの人々によって評価され、1983年に大衆芸能部門で第4回松尾芸能賞優秀賞を受賞した。その後、1987年には映画『次郎物語』に出演し、1990年には、芸術祭賞演芸部門を受賞した。彼のリリースしたCD『ザ・ヴァイオリン演歌』は、なぎら健壱とのコラボレーションで、彼の演奏スタイルを残す貴重な記録となった。

晩年と死去

晩年に至るまで、桜井は各地の大道芸イベントや音楽関係の活動に積極的に出演しており、彼の音楽活動に対する情熱は衰えることがなかった。しかし、1996年2月26日に肺炎のために76歳で他界した。彼の遺品であったヴァイオリンは、彼の思い出を引き継ぐ形として、なぎらに譲られた。

桜井敏雄は、演歌という日本の伝統音楽をヴァイオリンという楽器を用いて新たな形で表現し、後世の演歌師に多大な影響を与えた人物であり、彼の音楽は今も多くの人々に親しまれている。

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