桜井英記

桜井 英記

桜井 英記（さくらい ひでき）は、1897年（明治30年）9月19日に生まれ、1988年（昭和63年）2月7日に没した、日本の都市計画分野における重要な人物です。内務省の技師としてキャリアをスタートさせ、戦後は日本の都市計画コンサルタントの礎を築いた桜井・森都市計画事務所を設立しました。また、日本都市計画学会の会長としても、日本の都市計画の発展に貢献しました。

生涯とキャリア

東京府東京市本郷区（現在の東京都文京区）に生まれた桜井は、旧制東京府立第一中学校（現：東京都立日比谷高等学校）、第二高等学校を経て、1922年3月に東京帝国大学工学部土木工学科を卒業しました。同年5月、内務省都市計画局の第1技術課に配属され、都市計画の道に入ります。

1924年2月には帝都復興院技師となり、関東大震災後の帝都復興計画に携わりました。1925年8月からは内務省大臣官房都市計画課で内務技師として勤務。特に当時の課長であった山田博愛を補佐し、復興計画とその予算編成に関する資料作成に注力しました。その後も官房都市計画課の技師として、全国各地の都市計画策定に対する指導を行いました。1934年の函館大火に際しては、直ちに現地入りし、現在の美しい夜景の基盤となる復興計画の策定に尽力しました。

国際的な視野も持ち、1937年5月からは約1年間、欧米諸国への出張で最新の都市計画を視察しました。戦前の中国大陸における都市計画にも関わり、1938年5月から12月にかけて上海新都市計画策定のための調査団員として、また1940年7月には広東市（現在の広州市）の都市計画策定のため広東へ出張しています。

1944年7月には陸軍技師（勅任官）に就任し、同年8月には小川郷太郎を団長とするビルマ政府顧問団の一員としてラングーンに赴任しました。終戦後は捕虜となり、1946年5月に復員。内務省に復職しましたが、同年11月には退官しました。

コンサルタントとしての活動

内務省退官後、大学の同級生で都市計画埼玉地方委員会の技師であった森幸太郎と共に、1948年11月に桜井・森都市計画事務所を設立しました。これは日本の都市計画コンサルタントの草分けとされる組織です。同事務所は、その後の日本の都市開発において重要な役割を果たしましたが、1964年3月には業務を日本技術開発に引き継ぎました。

民間企業における貢献

桜井は民間の開発事業にも深く関わりました。1955年5月からは、東急田園都市線の開発に本格的に取り組んでいた東京急行電鉄の企画部に参画。1957年11月からは東急電鉄の顧問に就任し、1975年に退任するまでの約20年間にわたり、田園都市線沿線の広大な開発計画を指導しました。この間、1959年11月から1967年までは東急建設の取締役も務め、1963年5月から1971年までは東急ターンパイクの取締役も兼任するなど、東急グループの様々な開発プロジェクトにその専門知識を提供しました。

学会活動と栄誉

都市計画の専門家として、学会活動にも積極的に取り組みました。1957年から1962年まで日本都市計画学会の副会長を務め、1963年からは会長に就任し、1965年までその任を果たしました。

長年にわたる都市計画分野への貢献が認められ、1967年11月には勲三等瑞宝章を受章しています。

桜井英記は、官僚として国の都市計画に携わり、戦後はコンサルタントとして民間の大規模開発を指導するなど、日本の近代都市計画の発展に多岐にわたる貢献を残しました。その功績は、現代日本の都市景観にも少なからぬ影響を与えています。

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