梁 (漁具)

梁（やな）とは

梁（やな）とは、河川に杭や石を列状に配置し、水の流れを堰き止めて魚を誘導し、捕獲するための伝統的な漁具・仕掛けのことです。「簗」とも表記されます。

梁の構造

梁は、大きく分けて「上り梁」と「下り梁」の2種類があります。

上り梁： 川を遡上する魚を捕獲するために、川下に向けて設置されます。
下り梁： 川を下る魚を捕獲するために、川上に向けて設置されます。

梁は、魚を誘導する「梁袖」と、魚を捕獲する「梁口」から構成されています。

梁袖： 杭を打ち込み、竹や木で作った簀や蛇籠などを張り巡らせて魚を誘導します。土俵や土嚢などが用いられることもあります。
梁口： 梁袖から誘導された魚を捕獲する場所で、斜めに渡した簀や網で囲ったり、筌（うけ）と呼ばれる仕掛けを設置したりします。梁袖から梁口へ魚を追い込んだ後、簀や網を外して水を切り、残った魚を捕獲します。

梁漁の対象

梁漁の対象となる魚は、サケ、マス、アユ、ウナギ、ウグイなど、川に生息する様々な魚類です。梁は大量の魚を効率的に捕獲できますが、広範囲な水面を利用するため、排他的・独占的な要素を持つ特権として認識されることもありました（川株制度など）。

また、梁の設置を巡って、川の流域間で争いが起きたり、灌漑や水運の障害となることから梁漁そのものが禁じられたりする事例もありました。一部の梁には、魚道や航路用水路が併設されることもありました。

梁の歴史

梁の歴史は非常に古く、網代（あじろ）を原形としていると考えられています。また、御厨（みくりや）との関連も指摘されています。例えば、近江国安曇川にあった安曇川御厨が平安時代に上賀茂社に譲られた際、神人となった人々に梁の設置・漁撈を許可する権利が与えられました。

鎌倉時代には、近江国の野洲川で御上神社の庇護を受けた簗衆（やなしゅう）によって大量の梁が設置されていたことが知られています。戦国時代には、兵主大社の簗衆も組織されました。中世後期から江戸時代前期にかけて、治水技術の応用によって梁に改良が加えられました。

江戸時代には、領主に運上を納めることで梁漁の権利を認められた地域もありましたが、治水や水運、灌漑を優先して梁漁自体を禁止する地域もありました。

現在も、安曇川御厨の跡である滋賀県の安曇川下流の北舟木（高島市安曇川町北船木一帯）の「かつとり簗」のように、日本各地の河川で梁を見ることができます。

参考文献

菅豊「簗」（福田アジオ 他/編『日本民俗大辞典 下』（吉川弘文館、2000年） ISBN 978-4-642-01333-8）
喜多村俊夫「簗」（『日本史大事典 6』（平凡社、1994年） ISBN 978-4-582-13106-2）
二野瓶徳夫「簗」（『国史大辞典 14』（吉川弘文館、1993年） ISBN 978-4-642-00504-3）
日本民具学会 編『日本民具辞典』（ぎょうせい、1997年） ISBN 978-4-324-03912-0

関連項目

梁漁
やな

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