梁川剛一

梁川剛一（やながわ ごういち）：多才な芸術家の生涯

梁川剛一（1902年3月30日 - 1986年4月26日）は、北海道函館市出身の画家・彫刻家です。東京美術学校（現東京藝術大学）を首席で卒業し、戦前から戦後にかけて、児童雑誌や絵本の挿絵画家として幅広い世代に親しまれました。その一方で、彫刻家としても才能を発揮し、函館市の高田屋嘉兵衛像や長崎市グラバー園の三浦環（蝶々夫人）像など、後世に残る作品を制作しました。

生い立ちと美術との出会い

1902年、梁川剛一は函館で生まれました。幼少期から絵を描くことを好み、北海中学在学中は美術部「団栗会」で本郷新らと切磋琢磨しました。当初は東京高等工業学校を目指していましたが、上野の博覧会で見た彫刻に感銘を受け、東京美術学校彫刻科塑造部へ進路を変更。兵役を逃れるためだったとも語られていますが、ここで彼の芸術家としての才能が開花します。

美術学校での研鑽と帝展入選

東京美術学校では、朝倉文夫、建畠大夢、北村西望といった著名な彫刻家に師事し、技術を磨きました。在学中の1926年には、第7回帝国美術院展覧会（帝展）に「競技」を出品し、見事入選。「ロダンの血が通っている」と評されるなど、その才能は早くから注目を集めました。

挿絵画家としての躍進

美術学校卒業後、梁川は挿絵画家として活動を始めます。児童小説家の筒井敏雄の紹介で小学館の「セウガク一年生」に擬人画を描いたのをきっかけに、講談社の「少年倶楽部」など、数々の児童雑誌や絵本で挿絵を手がけました。江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズや、1940年の「新寶島」の挿絵は、彼の代表作として知られています。

彫刻家としての才能

挿絵画家として活躍する傍ら、梁川は彫刻家としても才能を発揮しました。函館図書館長の岡田健蔵や函館市長の齋藤與一郎といった地元ゆかりの人物の胸像を制作したほか、函館のシンボルともいえる高田屋嘉兵衛像の制作にも携わりました。また、長崎市のグラバー園には、オペラ「蝶々夫人」のヒロインである三浦環の像が設置されています。

戦後の活動と晩年

戦後、梁川は札幌で出版社「エルム社」を設立し、幼児向けの絵本や紙芝居の制作に取り組みました。晩年は、東京都中野区の自宅を改造して私設美術館を開設する計画を立てましたが、開館直前に死去。美術館は娘たちによって「梁川剛一記念美術館」として開館しましたが、数年後に閉館しました。現在、彼の作品は函館市文学館に寄贈・寄託され、一部が常設展示されています。

主な作品

彫刻

高田屋嘉兵衛像（函館市宝来町）
明治天皇御上陸記念碑（鳳凰）（函館市末広町）
岡田健蔵胸像（函館市中央図書館内）
ボーイズビーアンビシャス（札幌市、北海道大学サークル会館内）
三浦環（蝶々夫人）像（長崎市グラバー園内）

挿絵

少年倶楽部「敵中横断三百里」（山中峯太郎）、「少年探偵団」（江戸川乱歩）
* 講談社の絵本「リンカーン」「石の花」「クオレ物語」「ヒットラー」

梁川剛一は、挿絵画家として、彫刻家として、多岐にわたる分野で才能を発揮し、日本の美術界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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