梅沢節男

梅沢節男：税制改革に生涯を捧げた大蔵官僚

梅沢節男（1931年5月9日 - 2013年11月12日）は、滋賀県大津市出身の元大蔵官僚です。国税庁長官、公正取引委員会委員長などを歴任し、日本の税制改革に深く関わりました。

エリート官僚としてのキャリア

旧制滋賀県立膳所中学校（現・滋賀県立膳所高等学校）を経て、京都大学法学部を卒業後、大蔵省に入省しました。同期には、後に海外経済協力基金総裁や大蔵事務次官となる西垣昭などがいます。入省後、梅沢は着実にキャリアを積み重ね、1982年には主税局長に抜擢されました。

当時の大蔵省では、増税なき財政再建は建前に過ぎず、いずれ大型増税に踏み切るという見方が広がっていました。そうした状況下で、税のエキスパートとして知られる高橋元が事務次官に就任し、主税局出身の梅沢が抜擢されるという異例の人事がなされました。これは、従来の主計局中心の体制から、税制改革を推進するための布陣と見られました。

税制改革への情熱

主税局長時代、梅沢は消費税導入問題、少額貯蓄非課税制度（マル優）改革、グリーンカード導入など、多くの難題に取り組みました。特にマル優改革では、課税の公平性を主張し、与野党の郵政族議員からの猛反発を受けながらも、自民党税制調査会で自らの主張を貫き通しました。この一件は、梅沢の強い信念と不屈の精神を物語るエピソードとして知られています。

国税庁長官としての活躍

国税庁長官時代には、女性査察官を主人公にした映画「マルサの女」の制作に全面協力しました。これは、税務行政の透明性を高めようとする梅沢の姿勢を示すものであり、映画の内容には一切口を挟まず、自由に制作させたというエピソードが残っています。

公正取引委員会委員長としての手腕

国税庁長官退任後は、公正取引委員会委員長に就任しました。在任中は、豊富な政財界人脈を駆使し、独占禁止法違反の取り締まりに尽力しました。特に、ゼネコン汚職事件の際には、談合組織である埼玉土曜会への立ち入り検査を指揮し、事件の解明に大きく貢献しました。しかし、この事件をめぐっては、政治家からの圧力も受け、困難な状況下での職務遂行を余儀なくされました。

その後と晩年

公正取引委員会委員長退任後は、日本興業銀行副頭取を歴任しました。2013年11月12日、下咽頭がんのため82歳で死去しました。

梅沢節男は、激動の時代に日本の税制改革を担った官僚でした。その強靭な意志と不屈の精神は、多くの人々に感銘を与え、後世に語り継がれるべき人物と言えるでしょう。

主な略歴

旧制滋賀県立膳所中学校（現・滋賀県立膳所高等学校）卒業
1953年 京都大学法学部卒業、同年大蔵省に新制後期組入省（銀行局検査部）
1953年8月 銀行局特殊金融課
1955年7月 南九州財務局金融課
1957年10月 大阪国税局総務課
1958年11月 管財局接収貴金属監理官付
1959年6月 管財局貴金属第一課企画係長
1960年7月 紋別税務署長
1961年7月 甲府税務署長
1962年7月 国税庁長官官房会計課課長補佐
1964年9月 東京国税局総務部総務課長
1966年8月 主計局主計官補佐（労働係）
1968年7月 主計局主計官補佐（防衛第一係）
1969年8月 新東京国際空港公団経理課長
1971年7月 行政管理庁行政管理局管理官
1973年7月 主計局主計官（厚生・労働担当）
1976年6月 主税局総務課長
1978年6月 名古屋国税局長
1979年7月 主税局担当審議官
1981年 大阪国税局長
1982年 主税局長
1985年6月 国税庁長官（1987年6月まで）
* 1987年9月 公正取引委員会委員長（1992年まで）

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