高橋元

高橋元の生涯

高橋元（たかはし げん）は、1924年1月4日に東京都で生まれ、2013年8月9日に89歳で亡くなった日本の官僚です。大蔵省（現財務省）でそのキャリアを築き、事務次官、公正取引委員会委員長、日本開発銀行（現・日本政策投資銀行）総裁といった要職を歴任しました。

生い立ちと学歴

高橋元は、鉄道省を経て横浜工業専門学校教授を務めた高橋惟康を父に持ち、恵まれた環境で育ちました。府立高等学校を経て、1945年9月に東京帝国大学法学部法律学科を卒業。さらに1949年3月には東京大学法学部政治学科を卒業しました。

大蔵省でのキャリア

1949年、大蔵省に入省。同期入省には、徳田博美（野村総研理事長、銀行局長）、戸塚岩夫（関税局長、理財局次長（旧理財担当））、金子太郎（丸三証券社長、環境次官）、北田栄作（第三銀行初代頭取、電源開発理事、造幣局長）などがいます。

入省時のエピソードとして、面接日に風邪で欠席したものの、筆記試験での成績が非常に優秀だったため、当時の村上一文書課長の計らいで、例外的に面接をやり直したという逸話が残っています。

入省後、銀行局預金部資金課を皮切りに、東京国税局調査査察部国税調査官、八幡浜税務署長、仙台国税局総務部総務課長などを歴任。

その後、理財局外債課長補佐、証券第二課長補佐、大臣官房文書課長補佐などを務め、各方面との調整や法案成立に向けた根回しで手腕を発揮。この頃から「24年（入省）に高橋あり」と評されるようになりました。

1962年、田中角栄蔵相の秘書官に就任。その後、経済企画庁総合計画局計画官、主計局主計官（総理府特別機関、司法、警察担当）、主計官（総務課）、主税局税制第二課長、税制第一課長、大臣官房文書課長、主計局次長、経済企画庁官房長、主税局長などを歴任。

1981年6月には、田中角栄元首相の引き上げにより、大蔵事務次官に就任しました。

大平内閣時には、大蔵省は財政再建のため一般消費税導入を検討していましたが、大平首相の急死や田中の勢力拡大により頓挫。高橋が事務次官に就任すると、増税は凍結され、公共事業が増額されるなど、田中の派閥拡大のための政策が推進されました。

また、印刷局長にノンキャリアの石井直一が抜擢された背景には、高橋次官、松下康雄主計局長、山口光秀官房長、宍倉宗夫主計局総務課長らキャリア組が、ノンキャリア組の士気を鼓舞する目的があったとされています。

大蔵省退官後

事務次官退任後、1982年から1987年まで公正取引委員会委員長を務め、1987年からは日本開発銀行総裁として活躍しました。

死去

2013年8月9日、急性心筋梗塞により89歳で亡くなりました。

高橋元は、激動の時代において、大蔵官僚として日本の経済政策に大きな影響を与えた人物として、その名は記憶されるでしょう。

参考文献

栗林良光『大蔵省権力人脈』講談社文庫、1994年3月15日。
倉山満『増税と政局・暗闘50年史』イースト新書、2014年4月10日。ISBN 978-4-7816-5027-2。

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