梅津寺駅

梅津寺駅（ばいしんじえき）

愛媛県松山市の海岸部に位置する梅津寺駅は、伊予鉄道高浜線が通る駅です。駅番号はIY02が付与されています。この駅の最大の特徴は、ホームのすぐ目の前が砂浜であるという全国でも類を見ない立地です。改札を出て階段を降りると、そこはもう波打ち際。鉄道旅行と海水浴や海岸散策を気軽に組み合わせることができる、海に親しむための駅として知られています。

この駅は比較的古い歴史を持っています。最初は1899年（明治32年）7月6日に臨時駅として開設されました。その後、利用者の増加などを受けて、1931年（昭和6年）5月1日には常設駅として正式に認められます。長らく有人駅として機能していましたが、時代の流れとともに駅の運用体制も見直され、2022年（令和4年）4月1日からは無人駅となりました。

駅構造は、相対式ホーム2面2線を持つ地上駅です。無人化されていますが、ホームなどの基本的な設備は維持されています。特に2番線ホームのすぐ背後は海岸線に接しており、ホームに立つと潮の香りや波の音を感じることができます。
通常、列車は進行方向に合わせてホームを使い分けますが、梅津寺駅では独特な配線が採用されています。1番線が松山市駅方面行き（上り）と高浜駅方面行き（下り）の両方の本線として機能するのに対し、2番線は原則として高浜駅方面行き（下り）専用の本線となっています。これは、海岸に極めて近い2番線ホームが、台風などの異常気象時に高波をかぶる危険性を考慮した非常対策です。万が一の場合でも高浜行きの電車を安全に運行できるよう、1番線を下り本線として使用できるように、港山駅寄りの1番線には下り場内信号機と渡り線が、高浜駅寄りの1番線には下り出発信号機が設置されています。
また、この駅は伊予鉄道の路線の運行上の重要な境界でもあります。松山市駅から梅津寺駅までの区間は複線ですが、当駅を出ると終点の高浜駅までは単線となります。

駅周辺には、駅名にもなっている梅津寺や広大な敷地を持つ梅津寺公園があります。公園内には愛媛FCのクラブハウスや練習場である愛フィールド梅津寺も整備されており、スポーツ関連の施設が充実しています。その他、地域の小学校や中学校も近くに位置しており、生活の場としても機能しています。観光施設としては、地元の特産品などを扱うみきゃんパーク梅津寺も訪れることができます。

梅津寺駅は、そのユニークな立地だけでなく、文化的な側面でも広く知られています。特に、1991年に放送され大ヒットしたテレビドラマ『東京ラブストーリー』の最終回において、主要な舞台の一つとして使用されました。主人公の赤名リカが、思い出の証として駅のホームの柵にハンカチを結びつけるシーンは特に有名です。
このドラマの放送後、駅には「この駅の切符を持っていると素敵な出逢いに恵まれる」という都市伝説が生まれ、全国から多くのドラマファンや旅行者が訪れるようになりました。赤名リカに倣ってホームの柵にハンカチを結びつける人も後を絶たず、一時期はホームの柵が色とりどりのハンカチで埋め尽くされたほどでした。ドラマ放映から30年以上が経過した現在でも、ロケ地巡礼としてこの駅を訪れ、ハンカチを柵に残していく人が見られます。駅のホームには、ドラマのロケ地であったことを示す案内看板も設置されており、訪れる人々にその歴史を伝えています。
全国には他にも海に近い駅やドラマの舞台となった駅がありますが、ホームの目の前がすぐ砂浜という立地と、著名なドラマの印象的なシーンの舞台となった歴史が融合した梅津寺駅は、鉄道ファンのみならず、多くの人々にとって特別な魅力を持つ駅と言えるでしょう。

もう一度検索