梓潼郡

梓潼郡は、中国の歴史において、現在の四川省北部に位置した重要な郡です。その成立から変遷、そして消滅までの歴史を詳細に解説します。

成立と変遷

後漢末期の217年（建安22年）、広漢郡を分割して梓潼郡が設置されました。当初、梓潼郡は益州に属し、郡治は梓潼県に置かれました。この設置は、当時の政治情勢や地域統治の必要性から生じたものと考えられます。

267年（西晋の泰始3年）には、梁州が漢中に置かれると、梓潼郡は梁州に転属しました。この変更は、行政区画の再編や地域間のバランスを考慮した結果でしょう。晋代の梓潼郡は、梓潼、涪城、武連、黄安、漢徳、晋寿、剣閣、白水の8県を管轄し、地域における一定の勢力を保っていました。

南北朝時代に入ると、梓潼郡の所属はさらに変化します。439年（南朝宋の元嘉16年）には、再び益州に転属し、涪、梓潼、西浦、万安の4県を管轄しました。南朝斉の時代には、涪、梓潼、漢徳、新興、万安、西浦の6県を管轄しています。これらの変遷は、南北朝時代の政治的な不安定さや勢力争いを反映しています。

梓潼郡の廃止と復活

西魏の時代になると、梓潼郡は一旦廃止されます。しかし、唐代に入り、618年（武徳元年）には、隋代の新城郡が梓州と改められ、742年（天宝元年）には梓州が梓潼郡と改称されることで、その名が一時的に復活します。しかし、758年（乾元元年）には再び梓州へと改称され、梓潼郡としての歴史を終えました。

僑置梓潼郡と北梓潼郡、南梓潼郡

特筆すべきは、北魏時代に設置された僑置としての梓潼郡です。この梓潼郡は東益州に属し、華陽・興宋の2県を管轄しました。また、南朝斉の時代には、北梓潼郡と南梓潼郡がそれぞれ梁州に属して置かれました。これらの僑置郡の存在は、当時の政治的な混乱や流民の発生といった社会情勢を物語っています。

まとめ

梓潼郡は、後漢末から唐代にかけて、その所属や管轄県を幾度となく変えながらも、地域社会に一定の影響を与え続けました。その歴史は、中国の地方行政制度の変遷や、時代の政治情勢を理解する上で貴重な資料となります。特に南北朝時代の梓潼郡の分裂や僑置郡の存在は、当時の社会の不安定さを象徴していると言えるでしょう。

もう一度検索