梵網経 (パーリ)

『梵網経』について

『梵網経』（ぼんもうきょう）、またの名をBrahmajāla-sutta（ブラフマジャーラ・スッタ）は、パーリ仏典の経蔵に含まれる第1経として位置づけられています。この経典は、古代インドにおける思想体系を「六十二見」という形で整理し、網羅した内容が特徴的です。

経名の由来

「梵網」という表現は「聖なる網」を意味し、この名前は経典内で述べられる思想の多様性と、それらがどのように絡み合っているかを象徴しています。経典には、仏教の教えに基づく解釈が施され、それらを超越する道も示されています。

類似の漢訳経典

『梵網経』に似た経典には、『長阿含経』の21経に含まれる「梵動経」や、『梵網六十二見経』が挙げられます。これらは、仏教の思想や教えがどのように伝えられてきたかを理解する手助けとなります。

経典の構成

登場人物

この経典には、以下の主要な登場人物がいます。

• - 釈迦: 教えを説く主人公であるブッダ。
• - スッピヤ: 遊行者で、釈迦を誹謗する。
• - ブラフマダッタ: スッピヤの弟子であり、釈迦に敬意を払う。

場面設定

物語は、釈迦が500人の比丘と共にナーランダからラージャガハ（王舎城）へ向かう道中で展開します。その時、遊行者スッピヤが道を歩いている最中にブッダを誹謗する様子が描かれています。一方、弟子のブラフマダッタは、釈迦に対して敬意を示しています。このやり取りに対して、比丘たちは動揺し、騒ぎを起こします。

この騒動を見た釈迦は、比丘たちを静めるために現れ、教えを語り始めます。彼は最初に、小・中・大の三つの階層に分けて合計30の戒を解説します。

戒の種類

この戒は、以下のように分けられます。

• - 小戒: 十善戒や十戒に相当する基本的な戒。
• - 中戒: 宗教的修行において守るべき戒。
• - 大戒: より高度な悟りに向けた戒。

六十二見と仏道

次に、釈迦は外道の見解である「六十二見」に言及します。これらは、仏教的な立場から見ると解脱への障害となる見解とされています。経典では、仏教の教えに基づいてこれらの考えを超える道が示され、極めて重要な教訓が含まれています。

日本語訳

この経典に関する日本語訳としては、以下の作品があります。

• - 『南伝大蔵経・経蔵・長部経典1』 大蔵出版
• - 『パーリ仏典 長部（ディーガニカーヤ）戒蘊篇I』 片山一良訳 大蔵出版
• - 『原始仏典 長部経典1』 中村元監修 春秋社

脚注・出典と関連項目

『梵網経』における教えは、十善戒、十戒、十重禁戒、さらには六十二見の理解に深く関わっています。この経典は、仏教思想の形成において極めて重要な役割を果たしており、今日でも多くの人々がその教えを学び続けています。

外部リンク

• - Brahmajālasuttaṃ - Tipitaka.org

以上の内容から、『梵網経』は古代インドの思想を探求する上で欠かせない重要な経典であることが理解できます。

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