梶原拓

梶原拓：地方自治に尽力した政治家の光と影

梶原拓（かじわら ひろむ）は、1933年11月14日に岐阜県岐阜市で生まれ、2017年8月29日に83歳で没した日本の政治家です。建設省の官僚出身であり、岐阜県知事を4期16年という長きにわたり務め、全国知事会会長も歴任しました。彼の政治家人生は、地方の視点からの国政批判、産業振興への貢献、そして裏金問題という影を落とした不祥事によって彩られています。

エリート官僚から県知事へ

梶原は、岐阜県立岐阜高等学校、京都大学法学部を卒業後、建設省に入省しました。都市局局長などを歴任し、着実にキャリアを重ねていきました。1985年には、当時の岐阜県知事であった上松陽助の下で岐阜県副知事に就任し、政治の世界へと足を踏み入れます。そして1989年、上松の引退を受け、「夢おこし県政」を掲げて岐阜県知事に初当選を果たしました。

産業振興と東京中心主義批判

知事として梶原は、県内の産業振興に積極的に取り組みました。その一つが、当時世界に2台しかなかった6面スクリーンの仮想現実環境研究拠点「COSMOS」を県内に整備したことです。これは、最先端技術の研究開発を促進し、地域経済の活性化を目指したものでした。

また、梶原は東京中心主義を痛烈に批判したことでも知られています。1997年、国の道路財源配分について「東京は道路特定財源を飲んだり食ったりしていいが、我々はそうはいかない」「日本の政治は東京のタコツボに住む有識者に振り回されている」と発言し、地方の不満を代弁しました。この発言は、地方の共感を呼び、大きな反響を呼びました。

ハコモノ行政と財政悪化

しかし、梶原の県政運営には批判もありました。徳山ダムの建設やソフトピアジャパンなどの積極的な公共施設整備は、「ハコモノ行政」と批判され、県財政を悪化させる要因になったと指摘されています。これらの事業は、将来を見据えた投資という側面もありましたが、巨額の費用がかかり、県民の負担増につながったことは否定できません。

裏金問題と晩年

2006年、梶原は在任当時の不適切な公金処理問題、いわゆる岐阜県庁裏金問題で渦中の人物となりました。この問題は、彼の政治家としてのキャリアに大きな傷をつけ、表舞台からの引退を余儀なくされました。晩年は、日本再生研究会の代表を務めましたが、公金問題の影響もあり、目立った活動は行いませんでした。

旭日大綬章受章と死後の叙位

梶原は、その功績が認められ2006年4月に旭日大綬章を受章しました。そして、2017年8月29日に肺炎のため83歳で死去。政府は、彼の長年の功績を称え、従三位を追贈しました。

まとめ

梶原拓は、地方自治の振興に尽力した政治家であると同時に、ハコモノ行政や裏金問題といった負の側面も持ち合わせていました。彼の功績と過ちは、地方自治のあり方を考える上で、重要な教訓を与えてくれます。彼の人生は、地方政治の光と影を映し出す鏡として、後世に語り継がれるでしょう。

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