棋書 (将棋)

棋書の歴史と進化：江戸時代からAI時代まで

将棋を愛する人々にとって、棋書はなくてはならない存在です。古くは江戸時代から現代まで、数多くの棋書が出版され、将棋の理論や戦術の発展に大きく貢献してきました。本稿では、棋書の歴史を江戸時代から現代まで辿り、その変遷と特徴を解説します。

江戸時代の棋書：伝統と革新

[江戸時代]の棋書は、主に幕府将棋所関係者によって執筆されました。その内容は、定跡、棋譜集、詰将棋集など多岐に渡り、中には中[[将棋]]や大[[将棋]]といった、現代ではあまり見られない将棋類に関する記述も含まれています。

特に有名なのは、伊藤宗看・伊藤看寿兄弟による詰将棋集『将棋図巧』と『将棋無双』です。「詰むや詰まざるや百番」として知られるこれらの詰将棋は、当時の人々を魅了し、現代でもその難解さで知られています。米長邦雄は、プロ棋士になるためにはこれらの問題を全て解く必要があると主張し、羽生善治や藤井聡太も幼少期から取り組んでいたとされています。

定跡書としては、『将棋歩式』(大橋宗英)、『将棋絹篩』(福島順喜)、『将棋精選』(天野宗歩)が三大定跡書として挙げられます。『将棋精選』に掲載された「精選定跡」の一部は、現代のプロ棋戦でも指されているほど、その精度の高さが際立ちます。相掛かりや横歩取りといった現代将棋の基本戦法も、既に詳細な手順が研究され、現代につながる重要な基礎が築かれていました。

明治以降の棋書：復刻と新たな潮流

明治時代は、家元制度の衰退により、江戸時代の定跡書の復刻が中心となりました。しかし、小菅剣之助編『将棋名家手合』や坂田三吉の著作など、新たな棋書も登場し始めます。坂田三吉の『定跡詰物 将棋大全』には、駒落ち定跡や平手定跡、詰将棋などが収録され、特に二枚落ちの銀多伝発祥に関する記述は貴重な資料となっています。

大正時代には、関東大震災後、野田圭甫らによる棋書の露店販売が盛んになり、詰将棋の出題なども行われました。こうした露店販売は、大道詰[[将棋]]へと発展していくことになります。

昭和時代の棋書：近代将棋の隆盛

昭和時代には、大量の棋書が出版され、近代将棋の隆盛を支えました。木村義雄十四世名人の『将棋大観』は、詳細な解説を特徴とし、近代棋書の草分け的存在と言えます。木村義雄は、それまでの定跡書が単に指し手を羅列するだけだったのに対し、1手1手の指し手を丁寧に解説することで、将棋の学習を容易にしました。

加藤治郎の『将棋は歩から』は、長きにわたり愛読され続ける名著です。歩の使い方が中心テーマですが、将棋全体の戦略・戦術を深く理解する上で役立つ内容となっています。また、加藤一二三の『逆転の将棋』は、自戦記を解説した初めての定跡書として、好評を博しました。米長邦雄の『米長の将棋』も、自戦記をベースにした定跡書として高く評価されています。

山田道美は、『現代将棋の急所』などで、序盤作戦に関する多くの知見を残しました。特に振り飛車対策に関する研究は、現代将棋にも大きな影響を与えています。

現代の棋書：AI時代への対応

現代の棋書は、AIの進化も取り込みながら、より洗練された内容となっています。羽生善治の『羽生の頭脳』は、現代将棋の主要な戦型を網羅した名著として知られています。また、所司和晴や渡辺明は、AIを活用した定跡研究を積極的に行い、数多くの棋書を出版しています。

将棋AIの登場は、棋書の内容や作り方にも大きな変化をもたらしました。AIが解析した膨大なデータに基づいた定跡や戦術が紹介されるようになり、アマチュア棋士にとっても、プロ棋士の思考をより深く理解するための手がかりとなっています。

まとめ

江戸時代から現代まで、棋書は将棋の発展に欠かせない役割を果たしてきました。今後もAIなどの技術革新を取り入れながら、将棋愛好家にとって有益な情報提供を続け、将棋文化のさらなる発展に貢献していくでしょう。

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