森一弘

森一弘（もり かずひろ）は、1938年10月12日に神奈川県横浜市で生まれ、2023年9月2日に84歳で生涯を閉じたカトリック教会の司教です。洗礼名はパウロ。彼の人生は、信仰と学問、そして奉仕に捧げられました。

生い立ちと信仰への目覚め

森は、神棚と仏壇が共存する、当時の日本の平均的な家庭で育ちました。両親はクリスチャンではありませんでしたが、栄光学園高校在学中にカトリックの洗礼を受け、その時から司祭になる決意を固めていました。1959年には男子カルメル修道会に入会し、「神の母のパウロ」という修道名を得ました。

学問と司祭への道

1960年に上智大学文学部哲学科を卒業後、1962年にはローマ・カルメル会国際神学院へ留学。1967年3月にローマで司祭に叙階され、1968年に同学院を修了して帰国しました。帰国後は、東京都世田谷区上野毛の男子カルメル会修道院で生活し、カトリック上野毛教会の司牧を務めました。その後、カトリック東京大司教区の教区司祭となり、関口教会で助任司祭、主任司祭を歴任しました。

司教としての活動

1984年12月3日、森は東京大司教区の補佐司教に任命され、1985年2月23日に司教に叙階されました。司教としては、司牧と福音宣教に尽力する傍ら、聖書研究に励み、数多くの著書を執筆しました。1993年から2000年までカトリック中央協議会事務局担当司教、1994年から1998年まで同協議会事務局長を兼任するなど、教会の運営にも深く関わりました。2000年5月13日に補佐司教を引退した後も、真生会館の理事長として、執筆活動や黙想指導を続けました。

その他の活動と晩年

森は、1985年11月から2021年6月まで真生会館の理事長を務め、多くの人々に影響を与えました。死の直前まで同会館の講座を担当し、その知性と信仰に基づいた教えは、多くの人々を励まし続けました。2023年9月2日、上部消化管出血のため、東京逓信病院で帰天（死去）。葬儀ミサ・告別式は東京カテドラル聖マリア大聖堂で執り行われました。生前の希望により遺体は献体され、納骨式は数年後となる見込みです。

著書と作品

森は、生涯を通じて数多くの著書を執筆しました。その著作は、キリスト教入門、聖書解説、霊的考察、社会問題への提言など多岐にわたり、多くの読者に感銘を与えました。

主な著書には、

『愛とゆるしと祈りと　新しいキリスト教入門』
『聖書の黙想　福音のこだま』
『大きな力に信頼して　日曜日の説教集』
『神父が答える身上相談』
『愛は 死んでもいいということ』
『カトリック司教がみた日本社会の痛み』
『心の闇を乗り越えて　私の歩んできた道』
『人はみな、けなげに生きている』
『教皇フランシスコ　‐教会の変革と現代世界への挑戦‐』
『人生を支え、老いを照らす光』

などがあります。これらの著書は、森の深い信仰と知識、そして人間に対する温かい眼差しが反映されています。

また、五木寛之との対談をまとめた『神の発見』は、多くの読者に支持され、文庫化もされました。

児童書としては、

『かみさまはどこにいるの』
『わたしたちのイエスさま』
* 『ほんとうのクリスマス』

などがあり、子供たちにも分かりやすく信仰を伝えています。

絶筆

月刊誌『家庭の友』に連載していた「どの人生にも、価値があり、意味がある」は、公刊された文章としては最後の作品となりました。この連載は2023年1月号から10月号まで掲載されました。

森一弘司教の生涯は、信仰、学問、奉仕という三つの柱に支えられていました。彼の言葉と著作は、これからも多くの人々に希望と勇気を与え続けることでしょう。

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