森下景端

森下景端：幕末維新を駆け抜けた岡山藩士

森下景端（もりした かげなお）は、文政7年（1824年）に岡山藩士の家に生まれ、明治24年（1891年）に没した人物です。幼名は亀次郎、後に立太郎、慶太郎と改め、諱を景端と称しました。彼の生涯は、幕末の動乱期から明治維新を経て、近代国家の形成期へと至る激動の時代と重なります。

藩士としての出発

景端は、岡山藩七番町で森下重兵衛の子として生を受けました。先祖は百姓でしたが、宝暦年間に武士に取り立てられた家柄です。幼少期を過ごした隣家は、岡山藩儒の中川家で、その息子である中川横太郎とは幼馴染でしたが、仲は良くなかったと伝えられています。

弘化2年（1845年）、景端は先徒雇として岡山藩に出仕しました。安政3年（1858年）に父が亡くなったため家督を相続し、藩士としての地位を確立します。この頃から、牧野権六郎の目に留まるようになり、その後の彼の人生に大きな影響を与えることになります。

幕末の動乱期

元治元年（1864年）、牧野権六郎の命を受け、吉田屋十郎右衛門とともに長州藩に赴き、山縣半蔵らと面会。さらに、家老の益田親施との交渉にも成功しました。この頃から、景端は藩内で重要な役割を担うようになります。

慶応元年（1865年）には、牧野権六郎の推挙により郡奉行（備中国）に就任。しかし、慶応2年（1866年）に発生した倉敷浅尾騒動において、尊攘派であった景端は取締りに消極的でした。このことが、幕府から詰問を受ける原因となり、同年5月には郡奉行を罷免され、中小姓に格下げ、切米10俵を削減されるという処分を受けました。

失意の中、景端は同年10月に農兵組立掛に任命され、農民を徴募し農兵隊を組織します。この農兵隊は、後に「耕戦隊」と改名され、景端の指揮のもとで活躍することになります。

戊辰戦争での活躍

慶応3年（1867年）12月、太政官の命令により、西宮警備のため日置帯刀に随い、耕戦隊を率いて出陣。そして、明治元年（1868年）には、江戸東征軍の先鋒を命じられた岡山藩の一員として、耕戦隊と勇戦隊を率いて江戸へ出陣します。

江戸城明け渡しの際には、西の丸に入り接収役を務めました。その後、旧幕府軍との八幡戦争では、耕戦隊を率いて旧幕府軍の掃討にあたります。さらに、彰義隊討伐の上野戦争にも参加し、深手を負いながらも平岡仙蔵を討ち取るという武功を立てました。

傷が癒えぬまま、新政府の命令で奥州出兵に参加。耕戦隊（7月15日には遊奇隊と改名）を率いて、関田、矢板坂、湯長谷、磐城平城攻城戦、三春出兵、二本松城攻城戦、若松城総攻撃など、各地を転戦しました。

維新後の歩み

明治2年（1869年）、景端は近習物頭末席から知行150石となり、参政へと出世。さらに、版籍奉還によって権大参事に就任しました。明治4年（1871年）には、廃藩置県により大分県参事に登用され、その後、大分県権令、大分県令を歴任しました。

明治9年（1876年）に大分県令を辞任した後、岡山に戻り、池田章政家の家宰を務めたり、黒住教中教正、副管長として布教活動に従事しました。

明治24年（1891年）1月1日、景端は生涯を閉じました。享年68歳。1月3日、半田山墓地に埋葬されました。

森下景端は、激動の幕末維新期を武士として、そして地方官として生きた人物です。彼の足跡は、時代の変化とともに、武士から官僚へと転身していった人々の姿を象徴していると言えるでしょう。

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