森下貞義

森下貞義について

森下貞義（もりした さだよし、1915年 - 2001年）は、日本の著名な紙芝居師で、出生地は東京府荒川区であった。彼の家族も紙芝居師という伝統を持ち、父の森下貞三や弟の森下正雄も同じ道を選んでいたことから、家庭環境は彼の職業選択に大きな影響を与えていた。

初めての舞台

貞義は17歳の時に自然な流れで父の後を継ぎ、紙芝居師としての道を歩み始めた。彼が紙芝居に携わっていた頃、日本では約5万人もの紙芝居師が活動しており、この時期は紙芝居の全盛期とも言われる。観客の反応を肌で感じながら、彼はその技術を磨いていった。

戦中と復帰

しかし、第二次世界大戦中は仕事を中断せざるを得なかった。戦後の1948年、貞義は再び紙芝居の舞台に戻り、この時期は紙芝居の新たなピークを迎えていた。特に東京では、3000人以上の紙芝居師が活動していたと言われている。彼の名声は、1953年に東京都紙芝居コンクールで特選に選ばれたことでさらに高まった。弟の正雄も前年に同じ賞を受賞しており、彼らは紙芝居一家として広く知られるようになった。

テレビの登場

しかし、1953年はただの栄光の年ではなかった。この年にはテレビ放送が始まり、テレビの普及と貸し本屋の増加により、徐々に子供たちの紙芝居への関心が薄れていくとともに、紙芝居師の数も激減した。最終的には、紙芝居師は200人以下にまで減少することとなり、貞義も時代の変化に抗うことができず、1957年に紙芝居の廃業を決意し、ガラス加工の仕事に転職することとなった。

再び舞台に

その後、1986年に70歳でガラス工から退職し、再び紙芝居を始めることになった。過去の全盛期には及ばないものの、彼の独自の語り口や声色、そして画面にはない素朴さが子供たちの心を掴み、一定の人気を得ることができた。また、オリジナルの駄菓子も人気を呼び、懐かしさを感じさせる要素が多くのファンに支持された。

文化の継承

さらに、弟の正雄と、紙芝居仲間である梅田佳声と共に「紙芝居児童文化保存会」を結成し、紙芝居を文化として残す努力をしていた。彼らは全国各地で実演を行い、紙芝居の魅力を伝え続けた。1990年には胃癌の手術を受けつつも、その後も元気に紙芝居の仕事を続けた姿勢は、周囲に勇気を与えた。

最後の日々

80歳を超えてもなお、貞義は東京で唯一の街頭紙芝居屋として活動を続け、さらなる表現の場を求めて精力的に舌を使い続けた。2001年3月、85歳で彼はこの世を去ったが、彼の紙芝居スタイルは弟子の佐々木遊太に引き継がれ、紙芝居文化は息づいている。森下貞義の生涯は、日本の紙芝居文化の歴史の一部として、永遠に残り続けるであろう。

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