森本芳樹

森本 芳樹（もりもと よしき）は、1934年1月2日に生まれ、2012年5月29日に逝去した日本の西洋史学者です。九州大学名誉教授として、特に西欧中世史研究において顕著な業績を残しました。

森本氏は学術的な環境で育ち、父は数学者の森本清吾、母も同じく数学者の治枝という背景を持ちます。兄は天文学者の森本雅樹として知られ、子息の森本一夫氏もイスラム史研究者であるなど、著名な研究者を家族に持ちます。

東京に生まれた森本氏は、東京大学経済学部で学び、1956年に卒業しました。その後、同大学大学院に進み、西洋史学の研究を深め、1961年に博士課程を修了しました。研究者としてのキャリアは、下関市立大学での講師職から始まり、次いで九州大学に助教授として着任しました。

九州大学では、1981年7月から1997年3月まで、経済学部の教授として教鞭を執りました。この間、教育と研究の両面で多大な貢献を果たし、特に1994年7月から1996年6月にかけては経済学部長という重責を担い、大学運営にも関わりました。森本氏の研究活動は学界から高く評価されており、「森本氏の業績と学界における牽引力が、九州大学を東京大学や京都大学に比肩する西洋中世史研究の重要な拠点へと発展させた」と特筆されます。

1982年6月には、東京大学より経済学博士の学位を授与されました。この学位論文「西欧中世経済形成過程の諸問題」は、氏の代表的な研究テーマの一つを扱ったものであり、単著としても刊行されています。九州大学を退職した後も研究への情熱は衰えず、1997年から2004年まで久留米大学比較文化研究所の教授を務め、精力的に活動を続けました。

森本氏の専門は西欧中世の経済史、特に農村や都市の構造とその形成過程に関する研究です。プリュム修道院所領明細帳の分析など、史料に基づく緻密な研究に加え、比較史的な視点を取り入れた研究も行いました。その研究成果は多数の著作として公表されています。

主な単著には以下があります。

『西欧中世経済形成過程の諸問題』（木鐸社、1978年）
『中世農民の世界。甦るプリュム修道院所領明細帳』（岩波書店、2003年）
『比較史の道。ヨーロッパ中世から広い世界へ』（創文社、2004年）
『西欧中世形成期の農村と都市』（岩波書店、2005年）
『西欧中世初期農村史の革新。最近のヨーロッパ学界から』（木鐸社、2007年）
Etudes sur l'économie rurale du haut Moyen Age : Historiographie, régime domanial, polyptiques carolingiens (2008年)

主な編著としては以下があります。

『西欧中世における都市・農村関係の研究』（九州大学出版会、1988年）
Economie rurale et Economie urbaine au Moyen Age. Landwirtschaft und Stadtwirtschaft im Mittelalter (A. Verhulstと共編) (1994年)

これらの著作を通じて、森本氏は西欧中世社会の経済史研究に多大な貢献を残しました。

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