楊寛 (歴史学者)

楊寛（よう かん）

概要

楊寛（Yáng Kuān、1914年2月6日 - 2005年9月1日）は、中国上海出身の著名な歴史学者及び考古学者で、その人生は国の激動によって形作られました。彼は上海博物館の館長や復旦大学の教授を長年務め、先秦史や古代中国に関する幅広い研究で知られています。また、彼は疑古派の一人としても認識され、特に戦国時代や諸子百家、中国神話にその専門性を発揮しました。

生い立ち

楊寛は1914年、江蘇省青浦県にある白鶴江鎮に生まれました。彼の母は良家の出身であり、父は中医師でした。彼の少年時代は軍閥の戦争による影響を受け、1924年には家族が江浙戦争で焼失するという事件に見舞われました。1932年、蘇州中学を卒業し、同校は新文化運動や疑古派の影響を受けた進歩的な教育機関でした。ここでの教育が彼の学問に対する興味をかき立て、特に墨子に関心を持つこととなります。

学問の道へ

1936年、光華大学を卒業した楊寛は、日中戦争が進行する中で上海市博物館や広東省立勷勤大学で教職に就きます。その後、副教授として光華大学で教え、抗日運動に従事しました。1946年から1951年にかけては上海市博物館の館長としての任にあり、戦争で流出した文化財の回収や文物の保護に尽力しました。

政治と学問の葛藤

新しい中国、すなわち中華人民共和国成立後、楊寛は1952年まで上海博物館の初代館長を務めましたが、この間には政治的な圧迫も経験します。彼は共産党の政策を受けた一連の抑圧に遭遇し、文革の影響で自己批判を強制されたり、避難生活を送ることもありました。しかし、その間にも経済史や礼学についての研究を続け、作家としても多くの著作を残しました。

晩年

楊寛は1986年に退職後、アメリカのマイアミビーチに移住しました。その背景には彼の妻が現地で仕事をしていたことや、中国に安住の地が無くなったことがあります。アメリカに移ってからも学問的な活動を続け、さまざまな論著を発表し続けました。彼は2005年9月1日に逝去しました。

人物像

楊寛は自身を政治的には不偏不党としながらも、愛国心を強く抱いていたことで知られています。疑古派の重要な人物とされ、その研究方法は従来の信古派と疑古派を調整する独特なアプローチが評価されました。また、日本の中国学に関しても関心を持ち、数多くの著名な中国学者と交流を深めました。

主な著作

彼の著作には『戦国史』や『中国古代冶鉄技術発展史』などがあり、また多くの論文も執筆しました。特に、彼の自伝『歴史激流中動荡的曲折的経歴』は、彼自身の経験と歴史をテーマにしています。

楊寛の人生と業績は、彼の研究だけでなく、激動する中国の歴史の中で彼がどのように生き抜いたかを示す貴重な証です。

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