楊惟中

楊惟中の生涯と業績

楊惟中（よう いちゅう、1205年 - 1259年）は、13世紀前半にモンゴル帝国で活躍した漢人の官僚です。彼は、金末の動乱期に孤児となり、その後モンゴル帝国に仕官することになります。楊の字は彦誠であり、主にオゴデイに仕えることからその名が知られています。

初期の経歴と統治への寄与

楊惟中は、現在の河南省に位置する弘州（張家口市陽原県）出身です。彼が20歳になると、西域（中央アジア）に派遣され、政令や人口調査の業務を通じて現地の統治体制を整える任務を担いました。チンギス・カンが亡くなると、オゴデイが新たに皇帝となり、楊惟中は彼のもとでいっそう重用されます。

南宋侵攻とその後の活動

1235年、南宋への侵攻が始まると、楊惟中は重要な役職に就任します。彼は文官として、軍の補給活動に従事し、征服地から重要な人材や書物を金朝の首都である燕都に送る役割を果たしました。彼は後に中書令に任命され、太后ドレゲネの治世では宰相としても活躍しましたが、当時の中書省の役職名は正式なものではなく、漢人の自称にすぎないとの指摘もあります。

反乱鎮圧の功績

1246年には、平陽道に赴任していた官吏の不正を討つために派遣され、反乱を鎮圧する大きな成功を収めました。何度も抵抗を試みた反乱軍を打ち破り、首謀者を説得し投降に追い込みました。この功績により、楊惟中はその名声を高め、モンゴルにおける安定に寄与しました。

河南道およびさらなる活動

1251年、モンケが新たに皇帝に即位すると、楊惟中はクビライの指導のもと、河南道の統治を任されます。この時期、彼は過酷な取り立てを行っていた地方官劉福を処断し、河南の治安を回復させました。恵みを受けた民は楊惟中の統治のもとで安定した暮らしを享受できるようになりました。

その後、彼は陝右四川宣撫使に移り、さらに軍の規律を正すための活動を続けました。特に、郭千戸のような悪行を行う官吏を処断し、秩序を守るために尽力しました。

晩年と死

1259年、楊惟中は江淮京湖南北路の宣撫使に任じられ、現地のモンゴルおよび漢軍を統率しましたが、同年、蔡州で55歳で亡くなります。彼の死後、彼は忠粛公と呼ばれるようになり、その業績は評価され続けています。

参考文献

• - 藤野彪／牧野修二編『元朝史論集』汲古書院、2012年
• - 前田直典『元朝史の研究』東京大学出版会、1973年
• - 『元史』146列伝33楊惟中伝
• - 『新元史』巻133列伝30楊惟中伝
• - 『蒙兀児史記』巻61列伝43耶律楚材伝
• - 『国朝名臣事略』巻5中書楊忠肅公

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