楊瑄

楊瑄（よう せん）

楊瑄は、明代中期に活躍した官僚であり、その字は廷献と称しました。南昌府豊城県を本貫とし、1425年に誕生、1478年に54歳でその生涯を閉じました。彼は、楊子栄と周氏の間に生まれた子で、その生涯は、官僚としての強い信念と不屈の精神を示すものでした。

立身と官僚としての活動

1454年（景泰5年）に科挙の進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。1456年（景泰7年）には監察御史に任命され、その剛直さと正義感から、不正を許さない姿勢を貫きました。当時、景泰帝が病に倒れると、後継者を決めるべく皇太子を立てるよう廷臣たちが進言しましたが、景泰帝はこれを許しませんでした。楊瑄は、同僚の銭璡や樊英らと共に、この決定に反対し、皇帝に進言を行いました。しかし、1457年（天順元年）に奪門の変が起こると、皇太子を立てる運動は立ち消えとなりました。

権力者との対立

楊瑄は、直隷で馬に烙印を押す任務に就いていました。河間府に赴いた際、民衆から、曹吉祥と石亨が土地を不正に侵略しているという訴えを受けました。彼はこの事実を英宗に報告し、併せて曹吉祥と石亨が権力を笠に着て専横を極めている状況を具体的に指摘しました。英宗は楊瑄の正直さに感銘を受け、「真の御史なり」と述べ、大学士の李賢や徐有貞に事実を調査させ、吏部に楊瑄の名前を知らせ、抜擢を命じました。

この報告を聞いた曹吉祥は、英宗に訴え、楊瑄を罰するよう求めました。しかし、英宗はこれを聞き入れませんでした。その後、石亨が西征から帰還すると、御史の張鵬や盛顒らが、石亨と曹吉祥の不正を弾劾しようとしました。しかし、この情報は事前に給事中の王鉉によって石亨に漏洩していました。石亨と曹吉祥は、英宗に泣きつき、張鵬らが宦官の張永の甥を殺害し、党派を組んで自分たちを陥れようとしていると訴えました。激怒した英宗は、楊瑄や張鵬ら御史たちを逮捕させました。楊瑄と張鵬は投獄され、死罪が宣告されましたが、一命を許され、兵士として遼東の鉄嶺衛に流されました。

名誉回復と地方行政での活躍

1464年（天順8年）、成化帝が即位すると、楊瑄は監察御史として官職に復帰しました。その後、浙江按察副使に転じ、海沿いの地域を巡察しました。彼は、将校が私的に兵士を酷使することを禁止し、防潮堤の修復にも尽力しました。海岸に2300丈の堤防を築くなどの業績を上げました。

副使として十数年勤め、その優れた成績が認められ、浙江按察使に進みました。かつて西湖の水を利用して、諸県の田46万頃を灌漑していましたが、当時、その多くが塞がれていたため、楊瑄はこれらを浚渫するよう願い出ました。また、水門を設置し、灌漑に役立てようとしましたが、これらの事業が完了する前に、1478年（成化14年）7月1日に54歳で死去しました。

楊瑄の息子に楊源がおり、彼の意志を継いでいます。

まとめ

楊瑄は、不正を恐れず、常に民衆のために尽くした官僚でした。彼の生涯は、困難な状況でも信念を貫き、正義を追求する精神を示しており、後世に大きな影響を与えました。

参考文献:

『明史』巻162 列伝第50
浙江按察使楊公墓誌銘（徐紘『明名臣琬琰録』巻15所収）

もう一度検索