張鵬

明代の官僚、張鵬の生涯

張鵬（ちょう ほう、1420年 - 1491年）は、明代中期に活躍した官僚です。字は騰霄、号は拙庵といい、保定府易州淶水県（現在の河北省保定市淶水県）の出身です。父は張榘。

出世と剛直な御史時代

1451年（景泰2年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初は山西道監察御史として任官し、その剛直な性格から、政治に対する数々の提言を積極的に行いました。特に、以下の四事の上奏は、景泰帝に採用され、彼の政治手腕を示すものとなりました。

辺境の軍士への待遇改善：大同宣府巡按として出向した際、軍士の困窮した状況を目の当たりにし、「軍士の衣服や食事は粗末で、病にかかっても薬がなく、死んでも棺がない」と訴えました。そして、医薬や棺の給与、義塚の設置、祭日には酒食を供与することを求めました。この上奏は受け入れられ、辺境各地で同様の措置が実施されました。
淮安府・揚州府の賦税の徴収停止と牛種の給与：これらの地域の農民の負担を軽減するため、賦税の徴収停止と牛種の給与を上奏しました。

弾劾事件と左遷

1457年（天順元年）、同僚の楊瑄が権力者である石亨と曹吉祥を弾劾した際、張鵬もまた劉泰・魏瀚・康驥らと共にこの弾劾に加わりました。しかし、この弾劾は失敗し、張鵬は罪を得て投獄されました。御史の多くが左遷される中、張鵬は楊瑄と共に一兵士として遼東の鉄嶺衛に流され、後に広西の南丹衛に再流罪となりました。この事件は、彼の剛直な性格が災いした結果と言えるでしょう。

復帰と地方官としての活躍

1464年（天順8年）、成化帝が即位すると、張鵬は北京に召還され、1465年（成化元年）には廷臣の推薦で御史に復帰しました。1466年（成化2年）には福建按察使に抜擢され、地方官として手腕を発揮します。

1468年（成化4年）には右僉都御史となり、広西巡撫として赴任します。ここでは、少数民族の反乱を鎮圧するなどの功績を挙げました。その後、協理南京都察院事を務め、1471年（成化7年）には漕運総督兼淮揚四府巡撫に任命され、水運の要である漕運の管理に当たりました。1474年（成化10年）には右副都御史に進み、寧夏巡撫を務めました。

中央での活躍と晩年

1477年（成化13年）に北京に召還され、兵部右侍郎に転じ、1479年（成化15年）には兵部左侍郎に進みます。1482年（成化18年）3月には、ついに兵部尚書にまで上り詰めました。この間、珠池を守る宦官の韋助による交通回復の請願を退けたり、内侍の派遣に反対したりと、官僚としての職務を全うしました。また、ダヤン・ハーンの侵入に対しては、大同の兵力で対処できると主張し、援軍の要請を退けました。1484年（成化20年）春には資政大夫、冬には太子少保の位を加えられました。

しかし、大臣に上ってからの張鵬は、御史時代のような剛直さを失い、事なかれ主義に陥ってしまいます。閣臣の万安や劉吉らの専横を抑えることができず、1485年（成化21年）には天文異変を理由に、軍功のない宦官の召還を提言しますが、宦官を恐れて撤回してしまったため、当時の世論から非難を浴びました。都察院からも不適任として弾劾され、閏4月に致仕しました。晩年には、1487年（成化23年）に資徳大夫の位を受け、1491年（弘治4年）6月に72歳で亡くなりました。諡は懿簡といいます。

総括

張鵬は、御史時代にはその剛直さで知られましたが、大臣となってからは事なかれ主義に陥り、その言動は時に世論の批判を浴びました。彼の生涯は、官僚としての昇進と挫折、そして復帰を繰り返す波乱に満ちたものでした。彼の生涯は、明代中期の政治状況と官僚のあり方を考察する上で重要な資料となります。

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