楊虎城

楊虎城：西安事件を主導した悲劇の将軍

楊虎城（よう こじょう、1893年11月26日 - 1949年9月6日）は、中華民国の軍人であり、張学良と共に西安事件を主導したことで知られています。名は忠祥、号は虎城。彼は激動の時代に翻弄され、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生い立ちと初期の活動

1893年、楊虎城は陝西省に生まれました。1924年に孫文の紹介で中国国民党に入党し、陝西省での党活動に携わります。第一次国共合作が解消された1927年には、中国共産党への入党も申請していました。

西北軍閥の中心人物へ

1929年からは、南京国民政府を率いる蔣介石に従い、1930年には陝西省政府主席と西北綏靖公署主任に就任。中国西北部の軍閥の中心人物となり、彼が指揮する国民革命軍第十七路軍は「西北軍」「小西北軍」と呼ばれました。

抗日への傾倒と張学良との接近

しかし、楊虎城は蔣介石の方針である「安内攘外（国内の共産勢力を討伐することを優先し、外国からの侵略には目をつぶる）」に疑問を抱き始めます。1935年末に発生した一二・九運動では、運動に参加した学生側に理解を示し、反共よりも抗日を重視する張学良に接近していきました。

西安事件と国外亡命

1936年、楊虎城は蔣介石に対し、張学良とともにクーデターを決行（西安事件）。これにより、国民党と共産党の間の内戦は一時的に収拾され、第二次国共合作へと繋がります。しかし、事件後、楊虎城は責任を問われ、一時的に国外へ逃れることとなりました。

帰国と悲劇的な最期

1937年に日中戦争が勃発すると、楊虎城は抗日救国のため12月に帰国。しかし、帰国直後に蔣介石の指示により戴笠に捕らえられ、妻とともに各地で12年間も監禁されることになります。妻は虐待の末に1947年に病死。楊虎城自身も、監禁中に生まれた娘らとともに、重慶の白公館監獄に移送され、重慶解放直前の1949年9月6日、蔣介石の命令によって、幼い娘や秘書を含む6人全員が惨殺され、埋められました。

名誉回復と英雄としての顕彰

重慶を解放した中国人民解放軍によって遺体が発見され、葬儀が執り行われました。現在、楊虎城は中華人民共和国において英雄として顕彰されており、陝西省西安市長安区には“楊虎城将軍烈士陵園”が建立されています。

その後

2005年、台湾の政治家である連戦が中華人民共和国を訪問した際、楊虎城の子孫が連戦に書簡を送り、楊虎城のためにも両党の関係改善を進めるべきだと訴えました。

楊虎城は、その愛国心と行動力によって歴史に名を刻みましたが、その生涯は悲劇的な結末を迎えました。彼の名は、今もなお中国において、国共合作と抗日戦争の象徴として記憶されています。

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