戴笠

戴笠（たい りゅう）：謎多き国民党の特務 head

戴笠（たい りゅう、1897年5月28日 - 1946年3月17日）は、中華民国の政治家であり、軍人でした。その生涯は秘密に包まれ、毀誉褒貶が激しい人物として知られています。

生涯

浙江省江山県に生まれた戴笠は、若い頃は無頼漢のような生活を送っていましたが、後に軍人の道へ進みます。1926年には黄埔軍官学校に入学し、中国国民党に加入。蔣介石の反共路線を支持し、共産党や国民党左派の監視・調査活動に従事しました。

秘密警察組織のリーダーへ

満洲事変後、蔣介石の命により三民主義力行社が設立されると、戴笠は特務処長に任命され、秘密警察組織を統括するようになります。彼は親日派や共産党員などの監視、弾圧、暗殺といった秘密工作を遂行し、その冷酷さで恐れられました。

日中戦争が勃発すると、戴笠は上海でゲリラ部隊を組織し、日本軍に対する抵抗活動を展開しました。その後、力行社・藍衣社が解散されると、軍事委員会調査統計局（軍統）の副局長に就任。軍統を巨大な秘密情報組織に育て上げ、国民政府や軍内部にまで影響力を拡大しました。

アメリカとの協力

1942年には、アメリカ海軍の情報機関と協力して「中美特種技術合作所」を設立し、アメリカの技術や知識を導入しました。これにより、軍統の能力は飛躍的に向上し、秘密工作はさらに活発化しました。

戦後と突然の死

終戦後、戴笠は南京国民政府の旧支配地で事後処理にあたります。しかし、1946年3月17日、飛行機事故により急死。その死は様々な憶測を呼び、暗殺説も囁かれました。

評価

戴笠は、その冷酷な手段から「東洋のヒムラー」とも呼ばれましたが、一方で、抗日戦争における功績は高く評価されています。しかし、国共内戦においては、共産党に対する弾圧を強化したことが、国民党の敗北を招いた一因とも指摘されています。

蔣介石は戴笠の死を深く悼み、「戴笠が生きていれば、台湾に撤退せずに済んだのに」と語ったと伝えられています。戴笠の生涯は、中華民国の激動の歴史を象徴するものであり、その功績と罪は、今もなお議論の対象となっています。

参考文献

江紹貞「戴笠」中国社会科学院近代史研究所『民国人物伝 第12巻』中華書局、2005年。ISBN 7-101-02993-0。
菊池一隆『中国国民党特務と抗日戦争 ―「C・C」系・「藍衣社」・三民主義青年団―』汲古書院〈汲古叢書173〉、2022年10月20日。ISBN 978-4-7629-6072-7。

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