楠原佑介

楠原佑介（くすはら ゆうすけ）

プロフィール

楠原佑介は、1941年6月24日に岡山県児島郡小串村（現在の岡山市南区）で生まれ、2021年6月4日に逝去した日本の地名研究家、フリーライターです。出版社勤務を経てフリーランスとなり、「地名情報資料室・地名110番」を主宰しました。埼玉県上尾市に在住し、岡山朝日高校、京都大学文学部史学科（地理学）を卒業。藤岡謙二郎に師事しました。

地名研究への情熱

楠原は、地名に関する書籍の企画・出版に尽力し、地理学者の松尾俊郎の著作にも協力しました。特に、住居表示や市町村合併による地名の変更に強い危機感を抱き、歴史的・伝統的な地名の保存を強く訴えました。新住居表示制度の改正を目指した「地名を守る会」では事務局長を務め、法改正に貢献しました。また、NHKブックスの『現代地名考』では、実質的な編集・リライトを担当しました。

地名だけでなく、駅名、国際的な紛争の渦中にある竹島や尖閣諸島、日本海など、広義の地名についても積極的に意見を発信し、新聞、雑誌、テレビなど、様々なメディアで自説を展開しました。各種地名辞典や資料の編集にも携わり、地名研究の発展に貢献しました。

柳田国男の地名研究への批判

晩年には、柳田国男の『地名の研究』に対する疑問を、定期刊行物で提示し続けました。柳田の地名研究を修正・レベルアップさせることに尽力し、日本の地名研究に新たな視点を提供しました。季刊『日本主義』に「柳田国男のミステーク」として連載していましたが、楠原の死去により2017年に連載を終えました。

地名に対する考え方

楠原は、歴史的・伝統的な地名の保存・復活を絶対的に重視し、新たに創作された地名（ひらがな・カタカナ地名、広域地名、方角地名、瑞祥地名、合成地名など）を「歴史的伝統的地名の破壊」と強く批判しました。特に、合併市町村で旧国名を名乗る行為を「僭称」と批判し、歴史的根拠のない地名の使用に反対しました。

地方自治法第3条の「地方公共団体の名称は、従来の名称による」という規定を根拠に、合併などで新しく創作された地名が、従来の地名を尊重しないとして問題視しました。楠原は、新市町村名には、古代・中世の郷や荘・保などの歴史的な地名を使用すべきであると考え、たとえ古文書にしか残っていないような地名であっても、復活させて使用すべきだと主張しました。

国際紛争と地名学

近年では、竹島や尖閣諸島などの国際紛争に関わる地域の問題解決には、地名学の知識や歴史的研究が不可欠であると主張し、日本政府や学者の姿勢を批判しました。また、埼玉県、新潟県、千葉県、茨城県などにおける市町村名の変更にも意見を述べ、地名学の重要性を訴え続けました。

著書

楠原佑介は、多数の著書を執筆し、地名研究の成果を広く社会に共有しました。代表的な著書として以下のようなものがあります。

『「地名学」が解いた邪馬台国』（徳間書店、2002年）
『こんな市名はもういらない!　歴史的・伝統的地名保存マニュアル』（東京堂出版、2003年）
『この駅名に問題あり』（草思社、2005年）
『こだわり地名クイズ』（徳間文庫、2006年）
『こうして新地名は誕生した！』（ベスト新書、2008年）
『この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う』（幻冬舎新書、2011年）
『江戸・東京　間違いだらけの地名の由来』（祥伝社新書、2014年）
『日本の地名　由来のウソと真相』（河出書房新社、2015年）
『地名でわかる水害大国日本』（祥伝社新書、2016年）
『日本百名山　山の名はこうしてつけた』（祥伝社新書、2017年）

共編著

地名研究の発展に貢献するため、多くの書籍を共同で執筆・編集しました。

『地名伝説の謎』（本間信治共著、新人物往来社、1976年）
『難読地名辞典』山口恵一郎共編　東京堂出版　1978
『古代地名語源辞典』（櫻井澄夫、柴田利雄、溝手理太郎共著、東京堂出版、1981年）
『地名関係文献解題事典』（鏡味明克、櫻井澄夫共編、同朋舎　1981）
『地名用語語源辞典』（溝手理太郎共編、東京堂出版、1983年）
『難読・異読地名辞典』（東京堂出版、1999年）
『市町村名変遷辞典』地名情報資料室編 責任編集（東京堂出版、1999年）
『現代地名考』　谷川健一編　（NHKブックス　1979年）

外部リンク

* 地名情報資料室・楠原佑介

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