楢橋渡

楢橋 渡の生涯

楢橋 渡（ならはし わたる）は1902年、福岡県三井郡国分村に生まれ、日本の法律界や政治界で著名な存在となった。彼は弁護士としてだけでなく、国政においても重要な役割を果たした。彼は「怪物」と評されるほど、その風貌と弁舌で多くの人々に強い印象を与えた。

初期の経歴

楢橋は農業を営む楢橋浅吉の長男として育ったが、幼少期からの教育の道で挫折を経験した。三井郡立准教員養成所を卒業後、小倉師範学校を受験したが、色盲により不合格となり、失意の中出奔。北九州で炭鉱労働に従事することになった。
その後、彼は上京し、独学で弁護士試験に挑戦し、1923年に最年少（当時20歳）で合格を果たす。これが彼のキャリアの大きな転機となった。弁護士として、彼は大衆のための法曹として活動を始め、自由法曹団に加入した。

フランス留学と顧問業

1926年からは東京弁護士会及び日本弁護士協会からの派遣でフランスに留学。リヨン大学とソルボンヌ大学で学び、弁護士としての専門知識を深めた。1931年には、噂を呼んでいた東京市の公債に関する問題で顧問に就任し、フランスで8年にわたり難航していた交渉を成功に導く。その成果が東京市にもたらした利益は計り知れなかった。

戦後の政治活動

1940年、帰国後は北京飯店を手に入れ、社長として経営に携わる。同年、旧福岡3区で反戦の姿勢を持って選挙に出馬し、当選を果たす。戦後は1945年に幣原内閣に参加し、内閣法制局長官、次いで内閣書記官長に就任し、政権を支えた。
1947年には民主党の結成にも関与し、その後の政局の中で未分化派に属しながら、続けて国民民主党でも重要な役職を務めた。1950年代には改進党に所属し、自由民主党結成に貢献した。

運輸大臣としての改革

1959年には第2次岸内閣で運輸大臣に就任し、タクシー業界の改革に取り組んだ。業界内外からの反発を押し切り、個人タクシー制度の導入を実現した。この政策はその後の日本の交通体系に大きな影響を与えることとなった。

晩年と死去

しかし、1961年には武州鉄道汚職事件に関与して逮捕され、以降の選挙で落選を重ねることになった。時折政治活動を再開し、1972年の衆議院議員総選挙では再び当選を果たすが、1973年11月17日、脳卒中により急死する。彼は71年の短い生涯を閉じたが、その業績は今もなお評価され続けている。

著作とその後

楢橋渡は1968年に『激流に棹さして』という著書を発表しており、彼の生涯や政治信条に触れる貴重な一冊である。また、彼の足跡は今も様々な資料で探求され続けており、彼の政治的、法的な貢献は後の世代に引き継がれている。

もう一度検索