極東慰安唱歌

『極東慰安唱歌』は、戸川純が″戸川純ユニット″名義で1985年3月25日に発表した2枚目のオリジナル・アルバムです。アルファレコード-YENレーベルから発売されました。

概要

″戸川純ユニット″は、戸川純（歌唱）、吉川洋一郎（サウンドプロデュース）、飯尾芳史（レコーディングエンジニア）の3人から構成されています。

楽曲は、沖縄民謡、小学校校歌、童謡など多岐にわたるジャンルを網羅しています。オリジナルのLP盤は45回転で発売されました。

1987年の初CD化の際に、オリジナルの9曲に加え「家畜海峡」「人間合格」の2曲が追加収録され、全11曲となりました。この構成は、その後の再発盤にも引き継がれています。

2006年には、Sony Music Directから、本作を含むアルファレコード時代の戸川純関連アルバム9作（上野耕路、戸川京子作品を含む）が、デジタルリマスタリングされた音源で復刻されました。帯、レコードレーベル、歌詞カードなどが再現された紙ジャケット仕様となっています。ただし、ジャケットはオリジナル・レコード盤のE式からA式に変更されており、完全な再現ではありません。同時に、戸川純関連の映像作品2作もDVDで復刻されました。

収録曲について

アルバムには、以下の楽曲が収録されています。

眼球綺譚：戸川純と吉川洋一郎による作詞・作曲。ジョルジュ・バタイユの『眼球譚』と江戸川乱歩の『パノラマ島奇談』からタイトルが引用されています。ドラムには高橋幸宏が参加しています。
海ヤカラ：沖縄民謡をベースに、滝原康盛が補作詞を担当。吉川洋一郎と飯尾芳史が編曲を手掛けています。
戸山小学校校歌 〜赤組のうた：「戸山小学校校歌」は葛原しげる作詞、弘田龍太郎作曲。「赤組のうた」は作詞・作曲者不詳。編曲は吉川洋一郎と飯尾芳史。戸川純の母校である新宿区立戸山小学校の校歌と応援歌です。曲中には当時の朝日新聞ニュースのジングルとヘリコプターの音が収録されています。
無題：アンデス民謡をベースにした楽曲で、戸川純が作詞を担当。モンゴルをテーマにした歌詞が特徴的ですが、曲調はアンデス民謡です。歌詞に登場する″海蜘蛛″は架空の生物です。タイトルは、戸川純が「一生に一度は『無題』を使いたい」という思いから名付けられました。
家畜海峡：CDのみに収録。カセットブック『アルファベット』に収録された「G」が原曲です。タイトルは水上勉の『飢餓海峡』から取られていますが、沼正三の『家畜人ヤプー』とは無関係です。
人間合格：CDのみに収録。戸川純によれば、1950年代のヒット曲「クレイジー・ラブ」にコードやリズムが酷似しているとのことです。
極東花嫁：真名杏樹が作詞、吉川洋一郎が作曲・編曲を担当。戸川純は、歌詞の使い方が自身と異なることに戸惑いを感じたものの、「戸川純ユニットというユニット」として割り切って歌唱したと語っています。
ある晴れた日：ジャコモ・プッチーニ作曲のオペラ『蝶々夫人』のアリアを、堀内敬三が訳詞。吉川洋一郎と飯尾芳史が編曲を担当。
極東慰安唱歌：アルファレコードのYENレーベルが製作した告知用の非売品ソノシートのBGMとして使用されていた楽曲。戸川純が気に入り、アルバムに収録しました。当初のタイトルは作曲者である比賀江隆男の愛称から「スーちゃんの唄」でしたが、その後「日の丸ちゃん」を経て現在のタイトルとなりました。歌詞の「桜」は、インターネット上の歌詞サイトなどでは片仮名で「サクラ」と表記されているものがありますが、戸川純の意図としては漢字表記の「桜」が正しいとされています。
勅使河原美加の半生：戸川純作詞、吉川洋一郎作曲・編曲。タイトルの「勅使河原美加」は、当時のアルファレコード社員で、戸川純の広報担当者の名前を借用したものです。当初は映画『鬼龍院花子の生涯』からの引用で「勅使河原美加の生涯」にする予定でしたが、歌詞を見た本人の要望により「半生」に変更されました。
* 夢見る約束：細野晴臣の同名曲のカバー。吉川洋一郎と飯尾芳史が編曲を担当。

音楽配信

現在、ダウンロード販売で音楽配信されています。

『極東慰安唱歌』は、戸川純の音楽性を深く掘り下げた、実験精神に満ちたアルバムとして、今もなお多くのファンに愛されています。

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