榊 (樺型駆逐艦)

駆逐艦「榊」：知られざる激戦と慰霊の歴史

「榊（さかき）」は、大日本帝国海軍が第一次世界大戦中に運用した樺型駆逐艦の2番艦です。ここでは、「榊」の艦歴、地中海での激戦、そして戦後の慰霊について解説します。

艦歴

1914年11月5日、佐世保海軍工廠で起工された「榊」は、1915年2月15日に進水、同年3月22日に竣工しました。第一次世界大戦では、第二特務艦隊に所属し、1917年から1919年までシンガポール方面の警備と地中海での海上護衛に従事しました。

地中海での激戦

1917年6月11日、「榊」は護衛任務を終えマルタ島へ帰還する途中、オーストリア＝ハンガリー帝国海軍の潜水艦「U-27」の魚雷攻撃を受け、艦首を切断されるという大きな損傷を受けました。この攻撃で艦長の上原太一少佐を含む59名が戦死しました。

その後、ギリシャのピレウスで応急修理が行われ、1918年初旬にはマルタで本格的な修理が完了しました。この修理によって戦線に復帰し、任務を遂行しました。

マルタでの慰霊

「榊」の乗組員のうち、魚雷攻撃で死亡した59名の遺体は、マルタのイギリス人墓地の一角に設けられた「大日本帝国第二特務艦隊戦死者之墓」に埋葬されました。この墓地は、1921年4月25日に当時皇太子であった昭和天皇が欧州訪問の際に慰霊を行った場所でもあります。

さらに、2017年5月28日には、イタリアのタオルミーナで開催された第43回先進国首脳会議の帰途、マルタを訪問した当時の内閣総理大臣：安倍晋三並びに令夫人が同墓地に献花し、黙祷を捧げました。これは、遠い異国の地で祖国のために戦い、命を落とした「榊」の乗組員たちへの深い敬意と弔意を示すものでした。

美談と史実

一部で「ドイツ潜水艦から発射された魚雷の発見が一瞬遅れた際、連合国船舶の前に全速で突進して盾となり、撃沈された日本駆逐艦があった」という話が広まりましたが、これは史実ではありません。第一次世界大戦において、日本海軍の駆逐艦が撃沈された事実はなく、この話は「榊」や僚艦の活躍を誇張した風説であると考えられています。

その後

1932年4月1日、「榊」は除籍され、廃駆逐艦第1号（二代）と仮称されました。

歴代艦長

「榊」の艦長を務めたのは以下の人物です。

中原市介 少佐：1915年2月18日 - 1916年2月17日
上原太一 少佐：1916年2月17日 - 1917年6月11日戦死
佃久米太郎 少佐：1917年7月2日 - 11月8日
蒲田静三 大尉：1917年11月8日 -
蒲田静三 少佐：1918年12月1日 - 1919年12月1日
保村禎一 大尉：1919年12月1日 - 1920年5月24日（兼・心得）
加来博胤 少佐：1920年5月24日 - 1920年12月1日（兼）
柏木英 少佐：1920年12月1日 - 1921年12月1日
郷田喜一郎 少佐：1921年12月1日 - 1922年12月1日
難波正 少佐：1922年12月1日 - 1924年5月10日
伊藤長 少佐：1924年5月10日 - 1925年12月1日
福原一郎 少佐：1925年12月1日 - 1925年12月2日（兼）
後藤鉄五郎 少佐：1925年12月2日 - 1926年10月15日（兼）
清水他喜雄 少佐：1926年12月1日 - 1927年1月10日（兼）
田原吉興 大尉：1927年1月10日 - 1927年11月15日
大石堅志郎 大尉：1927年11月15日 - 1928年5月16日
門前鼎 少佐：1928年5月16日 - 1928年9月27日
稲垣義龝 少佐：1928年11月1日 - 1929年11月30日
島津信夫 少佐：1929年11月30日 - 1930年12月1日
有田貢 少佐：1930年12月1日 - 1931年4月1日（兼）

まとめ

駆逐艦「榊」は、第一次世界大戦という激動の時代に、異国の地で任務を遂行し、多くの犠牲者を出しました。その歴史は、戦後の慰霊を通じて、今もなお語り継がれています。

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