上原太一

上原太一：第一次世界大戦で散った駆逐艦「榊」艦長

上原太一（うえはら たいち）は、1881年（明治14年）に生まれ、1917年（大正6年）に没した日本の海軍軍人です。最終階級は海軍中佐。第一次世界大戦において、駆逐艦「榊」の艦長として地中海で戦い、戦没しました。

生涯

山口県出身の上原は、鴻城義塾を経て海軍兵学校に進みました。1903年（明治36年）に海軍兵学校を卒業（31期）。同期には、加藤隆義、長谷川清、及川古志郎らがいます。

兵学校卒業後、内地航海を経て日露戦争が開戦。「八島」に乗り組み実戦に参加しますが、「八島」は旅順港外で触雷し沈没。その後、「富士」へ転乗。
海軍少尉に任官後、「赤城」を経て「厳島」乗組みとして日本海海戦に参加しました。

呉海兵団、防護巡洋艦「比叡」、装甲巡洋艦「相模」、戦艦「薩摩」、横須賀敷設隊の各分隊長、第九艇隊長、駆逐艦「漣」駆逐艦長を歴任。海軍大学校乙種、海軍水雷学校高等科を修了するなど、水雷の専門家としての道を歩みました。

第一次世界大戦では、駆逐艦「吹雪」駆逐艦長として開戦を迎え、少佐に進級。その後、駆逐艦「榊」艦長として地中海に派遣され、連合国艦船の護衛任務に従事します。
1917年6月11日、「榊」はオーストリア＝ハンガリー帝国潜水艦U-27の雷撃を受け、上原は戦死しました。

駆逐艦「榊」

「榊」が所属する第二特務艦隊は、日英同盟に基づきイギリスの要請で編成され、地中海方面で連合国艦船の護衛任務にあたりました。

1917年4月26日、「榊」は僚艦「松」とともに、3266名の乗員と武器弾薬を積んだ大型客船「トランスシルバニア」を護衛中、イタリア・サナポ沖で同船が雷撃を受け撃沈されます。「榊」と「松」は、イタリア駆逐艦と協力して約3000名の乗員を救助しました。この功績により、上原、駆逐隊司令・横地錠二ら将兵27名がイギリス国王ジョージ5世から叙勲されています。

同年6月11日、「榊」と「松」は護衛任務を終え、マルタ島へ帰還中に敵潜水艦の潜望鏡を発見。「榊」艦長の上原は回避命令と同時に砲撃を命じましたが間に合わず、魚雷が命中し、上原は海中に投げ出され戦死しました。この雷撃による戦死者は上原の他、駆逐隊機関長・竹垣純信以下59名に及びました。
「榊」はイギリス工廠で修理され再就役し、艦長は蒲田静三が引き継ぎました。

逸話

上原は水雷畑を歩んだ駆逐艦乗りでしたが、初級士官時代は船に弱かったというエピソードが残っています。

地中海へ赴く際、同期の駆逐艦長6名とクラス会を開き、首席の枝原百合一に寄せ書きを贈りました。その際、上原は「吾人ハ唯だ死あるのみ」と記したとされています。

栄典

* 1904年（明治37年）10月10日 - 正八位

上原太一は、第一次世界大戦という激動の時代に、異国の地で祖国のために命を捧げた軍人でした。彼の功績は、今もなお語り継がれています。

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