榛原 (和紙舗)

榛原（はいばら）

株式会社榛原は、江戸時代後期の文化3年（1806年）に創業した、東京都中央区日本橋に拠点を置く老舗の和紙舗です。その歴史は二世紀以上にわたり、日本の伝統的な和紙文化を現代に伝えています。

創業と伝統

榛原の始まりは、初代・須原屋佐助が江戸・日本橋で開いた小間紙屋にさかのぼります。創業以来、高品質な和紙を取り扱っており、特に楮（こうぞ）や三椏（みつまた）と並ぶ和紙の主要原料である「雁皮」を用いた「雁皮紙」を、江戸の一般庶民に向けて初めて販売したことでも知られています。今日でも、白和紙や色彩豊かな友禅紙、千代紙といった伝統的な和紙に加え、便箋、金封、のし袋などの様々な紙製品や和小物を扱っています。

文化人との交流

榛原は、多くの著名な芸術家や文化人との交流があったことでも特筆されます。近代の画家である竹久夢二とは特に深い関係があり、四代目当主は夢二の欧州渡航を支援しました。榛原では、夢二がデザインした絵柄を用いた絵封筒や便箋、千代紙などを商品化し、これらの品は現在も榛原を代表する商品として多くの人々に愛されています。また、柴田是眞、河鍋暁斎、川瀬巴水、川端玉章、伊東深水など、各時代を彩った名だたる絵師たちとも交流を持ち、彼らが遺した貴重な下絵を数多く所蔵しています。これらの下絵の一部は、うちわ絵などに復刻され、店頭で販売されています。

国際的な評価と事業の多角化

明治時代には、国際的な舞台にも積極的に進出しました。1873年のウィーン万国博覧会、そして1878年のパリ万国博覧会に、日本の和紙としては初めて出品し、いずれも褒状を受けています。これらの博覧会を通じて欧州に渡った榛原製の和紙は、現在でもイギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館やグラスゴー美術館、フランスのルーブル美術館付属のパリ装飾美術館など、世界有数の美術館に収蔵され、その品質の高さが認められています。

和紙事業に加え、時代の変化に対応した事業展開も行っています。大正期以降の産業発展に伴う自動化や省力化の波を受け、日本で初めて計測記録紙の国産化に成功しました。この技術は継続的な改良が加えられ、現在も昭和39年（1964年）から稼働している神楽坂工場を中心に、国内外に供給されています。

現在の本店

本拠地である日本橋には、2015年5月20日に本店を新装オープンしました。再開発によって建てられた東京日本橋タワーの敷地内に、独立したモダンな建物として建てられたこの本店は、その優れたデザイン性が評価され、2016年度のグッドデザイン賞を受賞しています。

主な事業所

日本橋本店（東京都中央区日本橋）
日本橋第二オフィス（東京都中央区日本橋2-10-5）

関連会社

* 榛原オストリッチ製作所（東京都狛江市）

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