権三助十

権三助十（ごんざすけじゅう）

『権三助十』は、江戸時代に成立した講談『大岡政談』の一篇「小間物屋彦兵衛」に登場する駕籠舁き、権三と助十を主人公としたスピンオフ作品です。講談の一挿話として生まれた物語は、歌舞伎、浪曲、映画など、様々な形で翻案され、大衆に親しまれてきました。

成立と概要

『大岡政談』は、名奉行として知られる大岡忠相を主人公にした講談の総称です。様々な逸話や伝承が語られる中で、『権三助十』は「小間物屋彦兵衛」というエピソードから派生しました。岡本綺堂によれば、このエピソードは江戸や東京以外ではあまり知られていなかったものの、歌舞伎の世界で取り上げられたことで広まりました。歌舞伎での上演は、明治30年（1897年）に春木座で三代目片岡我當が権三を演じたのが最初とされています。

講談本としては、明治10年代に多く出版された『小間物屋彦兵衛』の一挿話として収録されています。岡本綺堂による戯曲『権三と助十』は、大正15年（1926年）に初演されました。

映画化

『権三助十』は、数多くの映画作品としても映像化されています。確認できるだけでも、以下のような作品が存在します。

権三と助十 (1923年): 後藤秋声監督作品。現存せず。
権三と助十 (1926年): 山下秀一監督作品。現存せず。
権三助十 (1932年): 石山稔監督作品。現存せず。
かごや判官 (1935年): 冬島泰三監督作品。東京国立近代美術館フィルムセンターに現存。
権三助十 捕物大騒動 (1936年): 山口哲平監督作品。現存せず。
権三助十 鶴一番大当り (1938年): 山口哲平監督作品。現存せず。
権三助十 天狗退治 (1938年): 山口哲平監督作品。東京国立近代美術館フィルムセンターに一部現存。
初笑ひかごや判官 (1939年): 橋本松男監督作品。現存せず。
権三と助十 (1940年): 古野栄作・堀内真那夫共同監督作品。現存せず。
権三と助十 かごや太平記 (1956年): 斎藤寅次郎監督作品。現存せず。
浪曲権三と助十 ゆうれい駕籠 (1960年):
浪曲権三と助十 呪いの置手紙 (1960年):
サラリーマン権三と助十 (1962年):
サラリーマン権三と助十 恋愛交叉点 (1962年):

これらの映画作品は、講談を基にしながらも、それぞれ独自の脚色や解釈が加えられています。岡本綺堂の戯曲を原作とした映画は、伊丹万作監督の『権三と助十』（1937年）のみです。

残念ながら、現存するフィルムはごく一部に限られています。東京国立近代美術館フィルムセンターなどが所蔵している『かごや判官』や『権三助十 天狗退治』は貴重な資料と言えるでしょう。

『権三助十』の魅力

権三と助十は、庶民的ながらも人情味あふれるキャラクターとして描かれています。彼らが巻き起こす騒動や、人情噺としての側面が、時代を超えて愛される理由でしょう。映画作品を通して、彼らの活躍を垣間見てはいかがでしょうか。

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