権三と助十

權三と助十

『權三と助十』（ごんざとすけじゅう）は、岡本綺堂によって1926年（大正15年）に初演された新歌舞伎の演目であり、また、それを原作として1937年（昭和12年）に伊丹万作が脚本・監督を手がけた日本の劇映画です。いずれも新漢字表記では『権三と助十』と表記されます。

戯曲と映画

岡本綺堂の戯曲は、18世紀以降に成立したとされる講談『大岡政談』の一挿話『権三助十』を下敷きにしています。伊丹万作による映画は、この戯曲を原作とした唯一の映画作品として知られています。原作としていない同名の映画も存在します。

略歴・概要

駕籠舁（かごかき）の権三（ごんざ）と助十（すけじゅう）は、元々『大岡政談』のエピソード『小間物屋彦兵衛』に登場する人物でした。岡本綺堂によれば、そこから派生した『権三助十』が歌舞伎の舞台で初めて上演されたのは、1897年（明治30年）5月の春木座であり、三代目片岡我當（のちの十一代目片岡仁左衛門）が権三を演じました。

岡本綺堂の戯曲は2幕構成の世話物であり、『大岡政談』を題材としていますが、「大岡越前守」は登場しません。武士もほとんど登場せず、町人、駕籠舁、左官屋、猿まわし、願人坊主といった身分の低い人々が物語の中心となります。初演は1926年（大正15年）7月に歌舞伎座で行われ、権三を十五代目市村羽左衛門、助十を二代目市川左團次が演じました。

伊丹万作による映画では、原作とは異なり、「大岡越前守」が登場し、深見泰三が演じています。権三を鳥羽陽之助、助十を小笠原章二郎がそれぞれ演じました。

登場人物

駕籠かき 權三
權三の女房 おかん
駕籠かき 助十
助十の弟 助八
家主 六郎兵衞
小間物屋 彦兵衞
彦兵衞のせがれ 彦三郎
左官屋 勘太郎
猿まはし 與助
願人坊主 雲哲
願人坊主 願哲
石子伴作
その他、長屋の男女、子供、捕方、駕籠舁など

映画

伊丹万作が監督した映画『權三と助十』は、岡本綺堂の戯曲を原作としています。東京国立近代美術館フィルムセンターには、オリジナルと同一の完全尺の35mmフィルムが所蔵されています。

スタッフ・作品データ

監督・脚色：伊丹万作
製作：森田信義
原作：岡本綺堂
撮影：三木茂
音楽：紙恭輔
公開日：1937年10月8日

キャスト

權三: 鳥羽陽之助
助十: 小笠原章二郎
大岡越前守: 深見泰三

製作逸話

撮影後のラッシュ時、權三と助十が衣装の半纏を着用していない場面が見つかり、画面の繋がりに問題が生じました。助監督をしていた市川崑が伊丹監督に謝罪したところ、伊丹は「監督の僕がうかつだったんだ。セットを建て直して、撮り直そう」と冷静に対応し、市川は伊丹の器の大きさに感銘を受けたと伝えられています。


参考文献
『綺堂劇談』、岡本綺堂、青蛙房、1956年

外部リンク
世界大百科事典『《権三と助十》』 - コトバンク
『權三と助十』：旧字旧仮名 - 青空文庫
映画「権三と助十」 - 日本映画情報システム

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