橋元家

橋元家：運送業から競走馬オーナーへ、実業家一族の物語

橋元家は、愛知県名古屋市を中心に事業を展開する実業家一族です。その歴史は、橋元幸吉・幸平兄弟が創業した運送会社「橋元組」に始まります。戦時中は軍用機の輸送、戦後は自衛隊機やYS-11の輸送など、時代のニーズに応じた事業展開で財を成しました。現在も「橋元運輸」として、その事業は受け継がれています。

しかし、橋元家の名は、競走馬の馬主としても広く知られています。特に、1964年から1965年にかけて5つのGIレースを制覇し、「史上最強馬」と称されたシンザンは、その象徴と言えるでしょう。シンザンは、橋元幸吉氏所有馬として、日本競馬史に輝く偉大な功績を残しました。

兄弟の生い立ちと「橋元組」の創業

橋元幸吉・幸平兄弟は、石川県珠洲市（旧宝立町）の農家に生まれました。兄の幸吉は、叔母が経営する名古屋の飲食店を頼って1935年に上京し、その後1937年には弟の幸平も名古屋へと移り住みます。幸吉は当初居酒屋を経営していましたが、幸平と共に「橋元組」を設立。牛を用いた軍用機の輸送事業を開始し、莫大な富を築きました。戦後はトラックによる輸送に転換し、自衛隊機やYS-11の輸送事業を継続して成功を収めました。1967年に幸吉氏が死去した後、幸平氏が会社を「橋元運輸」と改称し、事業を引き継ぎました。

競走馬との深い関わり

橋元家の競馬との関わりは深く、1950年頃から幸吉氏が名古屋競馬で競走馬の所有を始めました。1953年には日本中央競馬会の馬主資格を取得し、本格的に競走馬の所有に乗り出します。

幸吉氏の所有馬の中で最も有名なのが、前述のシンザンです。シンザンの活躍は、橋元家の名を全国に知らしめました。「シンザン」の名は、後に幸平氏が開設したパチンコチェーン「シンザンホール」にも使用されています。また、一族の馬主名義として「シンザンクラブ」も存在し、数々の活躍馬を輩出しています。

1965年には、幸吉氏の所有馬ダイコーターの売却話が持ち上がり、物議を醸しました。九州の炭坑王、上田清次郎氏への売却が決定寸前まで進んだものの、管理調教師の武田文吾氏の反対により取引は中止となりました。このエピソードは、橋元家の競走馬への情熱の深さを示す一例と言えるでしょう。

幸吉氏はシンザンらの活躍により、1964年と1965年には中央競馬のリーディングオーナーに輝きました。幸平氏は、兄の死後、馬主資格を取得し、1991年の有馬記念で優勝したダイユウサクなどを所有しました。さらに、幸平氏の妻である昭子氏も、重賞で活躍したダンシングサーパスを所有するなど、競馬への関与は一族全体に広がっています。

シンザンクラブ名義では、「ハシ」や「メモリー」の冠名を用いた競走馬を数多く所有し、菊花賞優勝馬ハシハーミットなど多くの重賞勝ち馬を輩出しました。近年では、シンザンホール代表の橋元勇氣氏も、中央競馬と地方競馬の両方で競走馬を所有しています。

パチンコ事業の展開

運送事業以外にも、橋元家はパチンコ事業でも成功を収めています。1963年に名古屋港にパチンコ店を開設し、その後「シンザンホール」としてチェーン展開しました。現在も「株式会社シンザンホール」として、事業を継続しています。

まとめ

橋元家は、運送事業と競走馬の所有、そしてパチンコ事業という多角的な事業展開で、大きな成功を収めてきました。その歴史は、兄弟の努力と情熱、そして競走馬への深い愛情によって彩られています。 シンザンをはじめとする数々の名馬の活躍は、橋元家の歴史と深く結びついており、これからもその名は、競馬史に刻まれ続けるでしょう。 そして、その事業は次世代へと受け継がれ、発展を続けていくことでしょう。

もう一度検索