橋本正晴

橋本正晴：名馬を育て上げた名調教師

橋本正晴（はしもと・まさはる、1919年3月20日 - 1990年1月16日）は、日本の競馬史に名を刻む、類まれな才能を持つ騎手、そして調教師でした。少年時代、両親を亡くし、橋本家に引き取られた彼は、家具工場での奉公を経て、14歳で騎手としての道を歩み始めます。

当初は京都競馬倶楽部鬼頭伊助厩舎で騎手見習いとして過ごしますが、鬼頭氏の引退後、自身も取得していた調教師免許を活かし、厩舎を引き継ぎます。その後、馬主の墨善エ門氏やカツラ冠名で知られる牧市太郎氏らとの出会いにより、騎手としての実績を着実に積み重ねていきました。

太平洋戦争の勃発により兵役につくこととなりますが、終戦後、競馬界に復帰。相羽仙一厩舎で厩務員として3年間研鑽を積んだ後、1950年に調教師免許を取得し、新たな一歩を踏み出します。

転機となったのは新進気鋭の馬主、三好諦三氏との出会いでした。三好氏の所有馬の管理を請け負うこととなり、その関係性は橋本氏の調教師人生を大きく変えます。「ウンリュウ」「ライリュウ」といった活躍馬を輩出、やがて「リュウ厩舎」と呼ばれるほどに成長していきます。

1961年、橋本厩舎に入厩したリュウフォーレルは、橋本正晴の調教師としての力量を決定的に証明する存在となります。1963年、宝塚記念、天皇賞（秋）、有馬記念とグランプリ競走を三冠制覇し、メイズイと並んで年度代表馬に選出される快挙を達成。関西馬として初めてアメリカ遠征を果たすなど、その活躍は競馬史に燦然と輝くものとなりました。

リュウフォーレルの後も、リュウファーロスなど数々の活躍馬を送り出し続けました。橋本厩舎は、常に競走界のトップを争う存在であり続けました。

1989年、足に障害を抱えたことから、定年を7年も残して引退。通算成績は6417戦658勝、重賞26勝という輝かしい記録を残しました。翌年、心筋梗塞のため70歳で逝去。その功績は今も競馬界に語り継がれています。

橋本正晴は厳格な指導で知られていましたが、その裏には弟子たちへの深い愛情がありました。三好夫妻との深い信頼関係も、彼の成功の大きな要因の一つと言えるでしょう。短気な一面もあったとされますが、涙もろく、人間味あふれる人物であったと、周囲の人々は証言しています。

彼の育成した多くの名馬、そしてその手腕は、日本の競馬界に大きな影響を与え続け、後世の調教師たちに大きな影響を与え続けているのです。

主な管理馬

リュウフォーレル: 1963年天皇賞（秋）、有馬記念など重賞7勝
ライリュウ: 1955年中京記念
リュウファーロス: 1966年阪神大賞典、1967年大阪杯、1968年日本経済新春杯、スワンステークスなど
そして多くの「リュウ」冠名の競走馬

受賞

* 優秀調教師賞（関西）2回（1961年、1963年）

橋本正晴という名は、日本の競馬史に永遠に刻まれるであろう、名調教師の名として輝き続けています。彼の厳しさの中に潜む優しさ、そして類まれな才能は、多くの競馬ファンに感動と興奮を与え続けました。そして、彼の育てた名馬たちは、これからも人々の記憶の中に生き続けることでしょう。

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