橋本長道

橋本 長道（はしもと ちょうどう）は、1984年（昭和59年）兵庫県小野市に生まれた日本の小説家、ライターです。

将棋との関わりは深く、中学生時代の1999年には中学生将棋王将戦で優勝する実力を持っていました。同年、プロ棋士を目指すための新進棋士奨励会に入会し、井上慶太門下となります。プロまであと一歩とされる1級まで昇級したものの、2003年に奨励会を退会します。その後、神戸大学経済学部に進学し、卒業までの間は神戸将棋センターでアルバイトをして将棋との接点を持ち続けました。

大学卒業後は政府系金融機関に就職しますが、約1年で退職。この後、約1年を経て小説の執筆を開始します。2010年にはジャンプ小説新人賞フリー部門特別賞を受賞し、作家への道を歩み始めます。そして翌2011年、将棋をテーマにした青春小説『サラの柔らかな香車』で集英社主催の第24回小説すばる新人賞を受賞し、小説家としてデビューを果たしました。このデビュー作は、翌2012年には第24回将棋ペンクラブ大賞（文芸部門）も受賞し、将棋文学の担い手としての地位を確立します。その後、『サラは銀の涙を探しに』を執筆するなど、将棋を題材とした作品を手がけました。

2018年には、自身の経験に基づいて奨励会の厳しい実像を描いたノンフィクション『奨励会 ～将棋プロ棋士への細い道～』を上梓。また、ウェブメディア『ねとらぼ』では「15年目の感想戦」と題する連載を持ち、将棋に関する様々な記事を執筆しました。

2022年には、前作から8年ぶりとなる長編小説『覇王の譜』を発表。将棋界の権力闘争を、三国志をモチーフに据えて描いたこの作品は、谷津矢車から「小説のことばで将棋のクオリアを掴んだ力作」と高く評価されました。同作は『WEB本の雑誌』第11回オリジナル文庫大賞を受賞したほか、翌2023年には第35回将棋ペンクラブ大賞の文芸賞大賞にも輝き、文学界のみならず将棋界からも大きな注目を集めました。また、2023年には『神戸新聞』で「随想」を連載するなど、幅広い活動を行っています。

人物としては、将棋や麻雀といったボードゲームを趣味としています。奨励会時代には船江恒平らと麻雀をよく打ち、「ほとんど降りない」「攻める麻雀」スタイルであったと語られています。自身の奨励会所属経験については、2022年のインタビューで「小説家としての私にとって、地に足がついた最強の持ち駒になっている」と述べており、その経験が自身の創作活動において重要な糧となっていることを示唆しています。

主な著作

『サラの柔らかな香車』集英社、2012年
『サラは銀の涙を探しに』集英社、2014年
『奨励会 ～将棋プロ棋士への細い道～』マイナビ出版、2018年
『覇王の譜』新潮社、2022年

主な受賞歴

1999年 - 中学生将棋王将戦 優勝
2010年 - ジャンプ小説新人賞フリー部門 特別賞
2011年 - 第24回小説すばる新人賞（『サラの柔らかな香車』）受賞
2012年 - 第24回将棋ペンクラブ大賞 文芸部門（『サラの柔らかな香車』）大賞
2022年 - 『WEB本の雑誌』第11回オリジナル文庫大賞（『覇王の譜』）受賞
2023年 - 第35回将棋ペンクラブ大賞 文芸賞（『覇王の譜』）大賞

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