橘家圓三

橘家 圓三：複数の落語家による歴史

「橘家圓三」という名は、日本の落語史において複数の落語家が名乗った、興味深いケースとして知られています。上方落語と東京落語という異なる舞台で活躍した複数の「橘家圓三」は、それぞれ独自の経歴と芸風を持ち、時代を彩りました。本稿では、これら複数の「橘家圓三」の人生と業績を詳細に解説します。

橘家 圓三（1876年 - 大正中期？）：上方落語家

最初の「橘家圓三」は、1876年生まれの上方落語家です。豊前国小倉藩士の子として生まれた彼は、寺の坊主を経て大阪で乾物屋の奉公を経験。その後、桂文左衛門に入門し桂文平を名乗り、1906年には初代橘ノ圓が結成した「圓頂派」に参加。翌年には橘ノ圓の門下で「圓三」を名乗るようになりました。主に新作[[落語]]を多く残し、神戸を拠点に活動する傍ら、幇間としても活躍したと言われています。しかし、大正中期以降の消息は不明であり、没年も分かっていません。本名は小笠原辰五郎です。

先代 橘家 圓三（1867年7月 - 1940年以降？）：東京落語家

明治時代から活躍した東京の落語家もまた、「橘家圓三」を名乗っていました。四代目三遊亭圓生の門下で「三遊亭遊生」として入門した彼は、1897年頃に「三遊亭圓三」、明治末期には「橘家圓三」と改名しました。明治から大正にかけては、四代目橘家圓蔵の番頭格として「品川の馬鹿銀」と呼ばれ、大きな影響力を持っていました。遊生時代から落語よりもむしろ川上音二郎の色声を得意としていたという逸話も残されています。晩年は北品川の清水横丁で芸者屋を営んでおり、妻も芸者だったと言われています。震災前までは番付にも名前が記載されており、少なくとも1940年頃までは存命であったことが確認されています。六代目三遊亭圓生は、1940年1月に義父である五代目三遊亭圓生の葬儀で圓三に参列したのを目撃したと証言しています。本名は加藤銀次郎でした。

橘家 圓三（1947年11月14日 - 2021年3月15日）：上方落語家

3人目の「橘家圓三」は、1947年11月14日生まれの上方落語家です。本名は土居成。愛媛県生まれ、大阪市旭区育ちで、興國高校卒業後、1967年4月に三代目林家染丸に入門し、「染和」として初高座を踏みます。師匠の死後、二代目笑福亭松之助門下に移り「笑福亭つる松」、後に「明石家つる松」と改名しましたが、1970年に破門されました。その後「橋本圓三」、「扇屋圓三」と改名を経て、1971年に橘ノ圓都に入門し、「橘家圓三」を名乗るようになりました。ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍した彼は、圓都の死後、三代目桂米朝の預かり弟子となります。40歳以降は医療関係書籍の編集出版や、食・健康・介護に関する講演活動に力を入れるようになり、落語家としての高座には上がらなくなりました。しかし、2012年に高座に復帰し、以降不定期ながら動楽亭に出演しました。2021年3月15日、73歳で逝去しました。


このように、「橘家圓三」の名は、時代を超えて異なる芸風と経歴を持つ複数の落語家によって受け継がれてきました。それぞれの「橘家圓三」の活躍は、日本の落語史における豊かな多様性を示す、貴重な事例と言えるでしょう。それぞれの個性と時代背景を理解することで、より深く落語の歴史を味わうことができるはずです。


参考文献

『古今東西落語家事典』（諸芸懇話会・大阪芸能懇話会共編、平凡社）
『上方落語家名鑑』（やまだりよこ著、出版文化社）
天満天神繁昌亭 落語家名鑑 - 上方落語協会公式プロフィール
ご存じ古今東西噺家紳士録
* 『現代上方演芸人名鑑』（相羽秋夫著、少年社）

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