桂文左衛門

桂文左衛門：上方落語史に名を刻んだ名優の生涯

桂文左衛門(かつら ぶんざえもん)は、明治から大正時代にかけて活躍した[上方落語]]家です。1844年、和歌山県[[紀の川市]に生まれ、本名は渡辺儀助。72歳で生涯を閉じました。

複雑な師弟関係と襲名劇

文左衛門の落語家としての歩みは、師弟関係の複雑な歴史と、激しい競争に彩られています。当初は初代桂萬光に師事し、初代桂南光を名乗ったのち、初代立川三光、初代桂文枝と師を転々とする中で、芸を磨いていきました。初代桂文枝門下時代には、初代桂文三を名乗り、後に2代目桂文枝を襲名。1904年には現在の名跡である桂文左衛門を名乗るに至ります。

師匠である初代桂文枝没後、2代目桂文枝襲名問題が勃発。文左衛門(当時、文三)と、同門の桂文都(後の2代目月亭文都)との間で激しい争いが繰り広げられ、文左衛門が勝利し、2代目桂文枝を襲名しました。この出来事は、「桂派」と「三友派」という、上方落語における二大勢力の形成へと繋がります。興味深いことに、文都の妻は文左衛門(文三)の妻の母にあたるという複雑な関係も、この争いをよりドラマチックなものとしています。

個性的な芸風と圧倒的な人気

文左衛門の芸風は、地味ながらも独特の味わいを持っていました。鼻をならしながら、面白くなさそうな顔でぼそぼそと語る様は、一見すると面白みに欠けるように思えます。しかし、その中にこそ、聴衆を惹きつける不思議な魅力があったのです。独特の語り口、間合い、そして表情によって生み出される、何とも言えないユーモラスな世界観は、多くの観客を魅了しました。

後進の育成と名跡の継承

晩年、文左衛門は弟子である初代桂小文枝に3代目桂文枝の名跡を譲り、自身は紀伊國屋文左衛門にちなんで桂文左衛門を名乗りました。1908年に引退。その後、1916年に72歳でこの世を去りました。法名は桂光院栄誉桃子居士。大鏡寺に埋葬されています。

多くの弟子たち

文左衛門は多くの弟子を育成し、上方落語界に大きな影響を与えました。3代目桂文枝、桂文屋、2代目桂梅枝、3代目桂文團治(桂文朝)、桂仁左衛門、3代目桂藤兵衛、2代目桂文三、初代桂枝雀、2代目桂萬光、初代桂談枝、初代桂燕枝、初代桂枝太郎、3代目桂文三、3代目桂文都、初代三笑亭芝楽(辻村藤三郎)、桂枝鶴(後の4代目笑福亭松鶴)、文平(後の橘家圓三)(小笠原辰五郎)など、錚々たる顔ぶれが彼の門下から輩出されています。これらの弟子たちは、それぞれの持ち味を生かし、上方落語界を更に盛り上げていきました。

弟子との逸話

桂文福は、師匠である5代目桂文枝に文福の名跡を継ぎたいと申し出たところ、「ドアホ！」と一喝されたというエピソードが残っています。このエピソードは、落語界における師弟関係の厳しさ、そして名跡継承をめぐる複雑な事情を垣間見せるものです。

まとめ

桂文左衛門は、複雑な師弟関係、激しい競争、そして独自の芸風によって、上方落語史に大きな足跡を残しました。数々の名人を輩出した師匠として、また、個性的な芸人として、彼は今もなお、多くの人々から記憶されています。彼の生涯は、上方落語の盛衰、そして人々の生き様を映し出す鏡と言えるでしょう。

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