機動戦士ガンダム ギレンの野望

『機動戦士ガンダム ギレンの野望』は、1998年にセガサターンで誕生した戦略シミュレーションゲームシリーズです。プレイヤーはガンダムシリーズの原点である「一年戦争」を舞台に、地球連邦軍大将レビルまたはジオン公国軍総帥ギレン・ザビの立場を選択し、自軍を勝利へと導くことを目指します。兵器の開発・生産、資源の確保、外交、そして戦闘といった多岐にわたる戦略を駆使してゲームを進めます。

ゲームの特色とシステム

本作の大きな特徴は、主人公がアムロやシャアといったお馴染みのキャラクターではなく、各陣営の総司令官であるレビルやギレンである点です。ゲームは南極条約締結後の緊迫した状況からスタートし、ジオン側は地球降下作戦、連邦側はV作戦の発動を目前に控えた状態から始まります。この初期段階では、ジオンは緒戦の疲弊と資源不足に、連邦は宇宙艦隊の壊滅と地球上の主要拠点喪失といった困難を抱えています。

ゲームシステムはターン制を採用しており、大きく分けてシミュレーションパートとユニットの開発・生産を行うパートで構成されます。シミュレーションパートはさらに戦術フェイズと戦闘フェイズに分かれ、プレイヤーはユニットの移動や攻撃目標の指定を行い、その結果が一斉戦闘として処理されます。敵からの攻撃に対しては、防御・回避に専念するか、反撃するかを選択可能です。

戦略面では、補給ラインの維持が極めて重要です。全てのユニットには物資の概念があり、補給ラインが繋がった拠点やライン上では物資が回復します。物資が枯渇すると、ユニットはほとんど行動不能となるため、拠点の確保、補給ラインに沿った進軍、そして敵の補給ラインの遮断が勝利の鍵となります。また、ミノフスキー粒子による索敵の成否が命中率に影響するなど、ガンダムの世界観を反映した要素も盛り込まれています。

特筆すべきは、一部兵器のゲーム内での有用性が原作での活躍とは必ずしも一致しない点です。例えば、原作で評価が分かれたガンタンクやボールが拠点攻略や支援で活躍したり、ギャンがビーム撹乱膜と白兵戦を組み合わせることで強力な戦術を生み出したりします。諜報・外交も重要な要素で、諜報活動で敵戦力や技術情報を得たり、中立勢力や敵軍需産業との外交で兵器入手や開発プラン獲得のチャンスが生まれたりします。

ユニットとパイロット

ユニットには特定のパイロットを搭乗させることができ、パイロットの能力に応じてユニットの性能が向上します。士官クラスのパイロットは指揮影響圏を持ち、配下のユニット性能も引き上げますが、能力の低い指揮官は逆に邪魔になることもあります。また、仲の良いパイロット同士を配置することで士気が高まる要素もあります。ユニットには性能の上限が設定されており、高性能なエース機と量産機を効果的に使い分ける戦略が求められます。NT専用機にオールドタイプを搭乗させることも可能ですが、本来の性能は発揮できません。

戦闘は最大で6部隊対1部隊といった状況も発生し得ます。ユニットは3機までスタック可能で、戦闘時には前列・中列・後列に配置され、前列ほど攻撃を受けやすくなります。また、パイロット同士の会話イベントは、原作シーンの再現に加え、ゲームオリジナルの組み合わせによる「もしも」の交流が描かれ、ファンを楽しませる要素となっています。

歴史のIF

ゲームの進行に伴い、原作に基づいたイベントが発生しますが、プレイヤーの選択や兵器開発状況によって、史実通りに進むか、あるいはIF（もしも）の展開に分岐するかが決まります。特に、史実通りに進むと主人公（ギレンやレビル）が終盤で戦死してしまう、いわゆるバッドエンドとなる点はシリーズの大きな特徴です（一部作品ではこの史実死を回避することで、一年戦争後の時代へと進めます）。

史実死は特定の選択肢で回避可能であり、例えばギレンはデギン殺害を回避したりキシリアを逮捕したり、レビルはグレート・デギンへの対応を調整したりすることで生存の道が開けます。また、ホワイトベース隊の扱い一つをとっても、プレイヤーの選択によって大きく展開が変化します。ジオン側はホワイトベース隊を撃破してパイロットの消耗を防ぐか、その探索を見送るかの選択で不利な状況を招く可能性があり、連邦側はホワイトベース隊を解散させるか否かで戦況や登場キャラクターが変わるなど、様々なIFシナリオが用意されています。これらのIF展開はプレイヤーの采配に委ねられており、シリーズを繰り返しプレイする大きな動機となっています。

シリーズの展開

1998年の初代作以来、本作は複数のプラットフォームで続編や拡張版が展開されてきました。PlayStationで発売された『ジオンの系譜』は、一年戦争だけでなく『機動戦士ガンダム0083』や『機動戦士Ζガンダム』の時代までを扱った二部構成となり、使用可能勢力やユニットが大幅に増加しました。PlayStation 2の『ジオン独立戦争記』は一年戦争に焦点を絞り、システムやグラフィックを強化。ワンダースワンカラーで発売された『特別編 蒼き星の覇者』は携帯機向けにシステムを簡略化し、特定の軍団長視点での戦いを描きました。PlayStation PortableとPlayStation 2で展開された『アクシズの脅威』および『アクシズの脅威V』は、収録作品やユニット・キャラクター数がさらに拡大。そして、PlayStation Portableの『新ギレンの野望』では、総帥だけでなくパイロットや司令官といった異なる視点でのプレイが可能になるなど、シリーズごとに新たな要素や視点が加えられています。

これらの作品を通じて、ゲームオリジナルのキャラクター（ゼロ・ムラサメ、レイラ・レイモンドなどの強化人間や、IF勢力の総帥たち）やモビルスーツ（ギャン系IF機体やifエース専用機など）も多数登場し、ガンダムワールドの新たな一面を見せています。登場するモビルスーツやキャラクターはテレビアニメ、OVA、劇場版だけでなく、小説、ゲーム、模型誌企画など多岐にわたるガンダム関連作品から網羅されており、その膨大なボリュームも本シリーズの魅力の一つです。

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