櫻井欽一

櫻井欽一：日本の鉱物学に貢献したアマチュア研究者

櫻井欽一（1912年～1993年）は、日本のアマチュア鉱物学者、地球科学者として知られています。東京都神田で老舗の鳥鍋屋を営む傍ら、並々ならぬ情熱を持って鉱物学を独学で究め、その功績は日本の鉱物学、ひいては地球科学の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと教育

東京神田に生まれた櫻井は、幼い頃から鉱物への強い興味を示していました。学校教育では攻玉社中学校・高等学校を経て専修大学予科を修了しましたが、彼の鉱物学への探求心は、本格的な学問教育とは無関係に進展していきました。専門的な知識や技術は独学で習得し、並外れた観察眼と分析力で、鉱物研究の世界を切り開いていきました。

研究活動と発見

1942年には東京科学博物館（現：国立科学博物館）の嘱託となり、研究活動の場を広げます。その後、横浜国立大学非常勤講師（1950年～1956年）として教育活動にも携わりました。

櫻井の研究活動における最も大きな功績は、新鉱物の発見です。1952年には神奈川県湯河原で発見した新鉱物を「湯河原沸石(yugawaralite)」と命名し、1954年には「亜砒藍鉄鉱(parasymplesite)」を発見、記載しました。これらの発見は、国際的に高い評価を受け、彼の鉱物学者としての地位を確固たるものにしました。

さらに、[1965年]]には兵庫県生野鉱山で発見された新鉱物が「櫻井鉱]」と、[1981年には静岡県河津鉱山で発見された新鉱物が「欽一石]」と命名されるという栄誉に浴しました。この命名により、櫻井欽一は、氏名ともに[国際鉱物学連合]に承認された鉱物名となった最初の日本人となりました。その後、同様の栄誉を受けた日本人としては、[[宮久三千年（宮久石、三千年鉱）、逸見千代子（逸見石、千代子石）がいます。

鉱物コレクションと遺産

櫻井は生涯をかけて、日本産鉱物を中心とした膨大な鉱物コレクションを構築しました。そのコレクションは「櫻井コレクション」として知られ、質と量の両面において日本最大規模を誇りました。彼の死後、この貴重なコレクションは国立科学博物館と神奈川県立生命の星博物館に寄贈され、現在も研究や教育に活用されています。コレクションは、櫻井の並外れた情熱と献身的な努力の証であり、未来の研究者にとって貴重な資源となっています。

受賞歴と著書

櫻井の研究活動は高く評価され、数々の賞を受賞しました。主な受賞歴としては、1964年の紫綬褒章、1973年の櫻井賞（櫻井記念会）、1993年の日本地質学会功労賞などがあります。

また、彼は数多くの著書を著し、鉱物学の普及にも貢献しました。代表的な著書には、『軍需鉱物資源肉眼鑑定法』（1944年）、『重要鉱物肉眼鑑定法』（1949年）、『鉱物の採集と見分け方』（1954年）などがあり、これらの書籍は、多くの鉱物愛好家や研究者にとって貴重な学習資料となっています。

まとめ

櫻井欽一は、家業を営みながら、並々ならぬ情熱と努力で鉱物学を極めた稀有な存在でした。彼の功績は、新鉱物の発見にとどまらず、膨大なコレクションの構築、そして後進育成へと広がります。櫻井コレクションは、日本の鉱物学研究の基礎を築いた彼の生涯を象徴する遺産であり、今後も日本の科学史において重要な役割を果たし続けることでしょう。彼の業績は、アマチュア研究者の可能性を示す、未来への大きな示唆を与えてくれます。

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