欧州通貨単位

欧州通貨単位（ECU）の歴史と機能

1979年3月13日から1998年12月31日までの間、ヨーロッパ共同体（EC）および欧州連合（EU）において、ユーロに先立つ通貨単位として欧州通貨単位（ECU）が使用されていました。ECUは、加盟国の為替レートを固定し、将来的な通貨統合を目指す欧州通貨制度（EMS）に基づき導入されました。通貨記号は₠（U+20A0）、ISO 4217通貨コードはXEUで、英名European Currency UnitからECUと略され、フランス革命以前の銀貨écuと名称が似ていたことから、複数の言語で発音が同じになります。

ECUの導入と役割

ECUは、主に欧州連合の計算単位として使用され、銀行間取引など非現金取引では1999年1月からユーロに取って代わられました。ECUは、実際に流通する通貨ではなく、法定通貨でもありませんでした。しかし、欧州の公的機関においては、中央銀行間の決済やEC予算の計算単位として重要な役割を果たしていました。

1989年にはベルギーを皮切りに、ジブラルタル、セント・トーマス・プリンセス、フランス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マルタなどでもECU貨幣が発行されました。当初は、通貨統合後の統一通貨もECUと仮称されていましたが、1995年のEU首脳会議でユーロと命名されることが決定されました。これは、フランスの銀貨「エキュ」と酷似した名称にドイツが難色を示したためです。

ECUの機能：公的ECUと民間ECU

ECUは、EMSにおける重要な構成要素でした。EMSは、欧州為替相場メカニズム（ERM）、ECUの創設、決済手段としてのECUの使用、介入資金をファイナンスする信用供与制度の拡充などを含む制度です。

ECUの機能は、大きく分けて公的ECUと民間ECUに分類できます。

公的ECUは、主にヨーロッパの公的機関によって使用され、以下のような機能を持っていました。

ERMの表示機能
乖離指標の基準
介入・信用メカニズムの計算単位
通貨当局間の決済手段

一方、民間ECUは、ヨーロッパの民間において自然発生的に使用され、民間の資本取引や経常取引で使用されました。民間ECUは、構成通貨を組み合わせることで構築されたり、元の構成通貨に分解されたりすることが可能でした。

ユーロへの移行

1999年1月1日、ECUはユーロに取って代わられ、レートは1 ECU = 1ユーロと設定されました。しかし、ECUバスケットに参加していたイギリスとデンマークはユーロ圏には加わらず、ECUバスケットに参加していなかったフィンランドとオーストリアが新たにユーロ圏に加わるという変化がありました。ECUはユーロへの円滑な移行を促す役割を果たしたと言えるでしょう。

まとめ

欧州通貨単位（ECU）は、ユーロ導入への重要なステップとして、欧州の経済統合に貢献した通貨単位でした。その歴史と機能、そしてユーロへの移行過程を理解することは、現代の欧州経済を理解する上で重要な要素となります。ECUは単なる計算単位を超え、ヨーロッパ統合の象徴的な存在として歴史に刻まれています。

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