歌のチャンピオン

『歌のチャンピオン』

『歌のチャンピオン』は、1970年から1971年にかけて日本テレビ系列で放送された、一般視聴者参加型の歌謡番組であり、将来のスターを発掘するオーディション番組としての側面も持っていました。番組は、1970年10月4日から1971年3月28日まで『ペアでハワイへ 歌のチャンピオン』として放送された後、1971年4月4日からは『歌のチャンピオン』と改題され、同年9月26日まで放送されました。この番組は、かつて日曜午前に放送されていた『歌のグランプリショー』の実質的な後継企画として位置づけられています。

番組のシステムと進行

毎週、前週からのチャンピオン1名と、新たに選ばれた12名の挑戦者、合わせて13名が歌唱力を競い合いました。主な収録会場として、後楽園ホールが使用されました。

番組はまず、12名の挑戦者たちが一人ずつ歌声を披露することから始まります。審査員は彼らのパフォーマンスを100点満点で採点し、その結果はステージ中央に設置された大きな点数表示ランプにリアルタイムで表示されました。挑戦者の中で最も高い得点を獲得した参加者には、副賞としてペアでのハワイ旅行が贈られました。

挑戦者たちの歌唱と採点が終わると、前週のチャンピオンと、この日の挑戦者の中から最高得点者が出場する決勝戦が行われます。この最終対決に勝利した側が「勝ち抜き賞」を獲得し、次週の番組への出場権を得て、チャンピオンとして挑戦者を迎え撃つことになります。

この勝ち抜きを連続して5回達成した参加者は、「グランドチャンピオン」として認定され、大きな栄誉が与えられました。グランドチャンピオンの誕生の瞬間には、会場の天井から大量の紙吹雪が舞い降りる華やかな演出がなされ、賞金50万円が贈られました。さらに、グランドチャンピオンの中から、審査員によって特にその力量と将来性が認められた者は、日本テレビが推進する新人歌手育成プロジェクト「ニューボイス」への所属が検討され、プロ歌手としての華々しいデビューの道が開かれる可能性も秘めていました。この点は、まさに多くの歌好きが夢を叶えるための、狭き門ながらも確かな登竜門としての機能を示していました。

放送枠の変遷

番組の放送時間は、その歴史の中で一部変更がありました。開始当初の『ペアでハワイへ 歌のチャンピオン』時代は、日本標準時で毎週日曜日の午前11時から11時55分までの55分間でした。しかし、1971年4月に『歌のチャンピオン』と改題されるとともに、同時期に日曜午前11時からの枠で新しい番組『にっぽんの座標』がスタートした影響を受け、放送時間が15分短縮され、日曜日の午前11時15分から11時55分までの40分枠での放送となりました。

主な出演者

番組の司会は、当時人気を博していたタレントのロイ・ジェームスが担当しました。審査員には、日本の音楽界を代表する作曲家や作詞家が名を連ねており、いずみたく、市川昭介、平尾昌晃、星野哲郎といった著名人が、参加者の歌唱力や将来性を厳しくも温かく評価しました。

『スター誕生!』への影響

『歌のチャンピオン』で採用された、視聴者参加による歌唱コンテスト形式や、勝ち抜きシステムを経てプロ歌手デビューのチャンスを得るというコンセプトは、この番組の終了後にスタートし、社会現象となるほどの大成功を収めた伝説的なオーディション番組『スター誕生!』に多大な影響を与えました。『スター誕生!』は、多くのアイドルや歌手を輩出し、日本の音楽史に大きな足跡を残しましたが、その基礎となるオーディション番組のスタイルは、『歌のチャンピオン』によって確立されたと言えるでしょう。

その他

企画段階では、「素人歌のチャンピオン」という仮題も検討されていたと伝えられています。また、後年になって熊本放送や宮崎放送といった地方局で、『RKK歌のチャンピオン』や『MRT10人抜き歌のチャンピオン』といった類似したタイトルのローカル番組が放送された例がありますが、これらは日本テレビで放送された『歌のチャンピオン』とは内容や企画に関連性のない、全く別のローカル企画でした。

関連番組として、前身の『歌のグランプリショー』や、後継であり同様のコンセプトを発展させた『スター誕生!』が挙げられます。

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