ロイ・ジェームス

ロイ・ジェームス：異色のタレント、その生涯

ロイ・ジェームス（1929年3月9日 - 1982年12月29日）は、日本の芸能界で独特の存在感を放ったタレント、俳優、コメンテーターです。本名はハンナン・サファといい、後に六条祐道、そして湯浅祐道と改名しました。彼の波乱に満ちた人生と、多彩な才能が開花した芸能活動について詳しく見ていきましょう。

生い立ちと出自

ロイ・ジェームスは東京市下谷区（現在の東京都台東区）で生まれました。彼のルーツは、ロシア革命後に日本へ亡命してきたカザン・タタール人（カザン・トルコ人）にあります。父親のアイナン・ムハンマド・サファは、ウラル山脈西部の都市ペルミ出身で、戦後には東京回教寺院（現在の東京ジャーミイ）の導師イマームを務めた人物でした。

旧制下谷区立竹町小学校、旧制郁文館工業学校を経て、1954年に明治大学商学部商学科を卒業。大学時代には野球部に所属していましたが、後にプロ野球選手となる秋山登や土井淳の加入により、レギュラーの座を諦めざるを得ませんでした。また、戦後には「ストレート・ロイ」のリングネームで柔拳（柔道とボクシングの異種格闘技戦）に出場した経験もあります。

芸能界入りと活躍

1953年、大学在学中にタレントのE・H・エリックの紹介で日劇ミュージックホールの舞台に立ち、芸能界デビューを果たしました。エリックと共に日本の「外国人タレント」の草分け的存在となり、その後の芸能活動の基礎を築きました。1955年には、成瀬巳喜男監督の映画『浮雲』で米兵役を演じ、映画俳優としてのキャリアをスタート。その後、その流暢な日本語と独特の辛口トークで、数々のテレビやラジオ番組で人気を博しました。

ロイ・ジェームスの魅力は、その飾らない人柄と歯に衣着せぬ発言にありました。また、CMにも多数出演し、その存在は広く知られるようになりました。

国籍取得と結婚

1971年には日本国籍を取得し、六条祐道と改名。1975年には湯浅あつ子と結婚し、湯浅姓となりました。あつ子夫人は作家三島由紀夫の親しい友人であり、三島の著書『鏡子の家』のモデルとなった人物としても知られています。

晩年と死

1982年春頃、体調不良を理由に芸能活動を休止し、療養に専念しましたが、同年12月29日に咽頭がんと肺炎の併発により53歳で死去しました。墓所は多磨霊園の外国人墓地の一角にあるムスリム墓地にあります。かつては木製の墓碑でしたが、現在は黒い墓石に変わっています。

馬主としての活動

ロイ・ジェームスは本名名義で馬主としても活動しており、1975年の桜花賞には所有馬のイブサンが出走しました。

出演作品

映画

『浮雲』（1955年） - 米兵役
『大番完結篇』（1959年） - 憲兵役
『奥様三羽烏』（1959年） - ロバート・ルイス役
『日本ロマンス旅行』（1959年） - ピンカートン役
『人も歩けば』（1960年） - バブ近藤役
『歌え若人達』（1963年） - プロデューサー中井役
『ど根性物語 銭の踊り』（1964年） - 堀川五六役
『夢のハワイで盆踊り』（1964年） - 司会者役

テレビ番組

『花王ワンダフルクイズ』（1956年 - 1962年、解答者）
『いじわるクイズ時価1万円』（1963年 - 1964年、司会）
『独占!!スポーツ情報』
『霊感ヤマカン第六感』（初期レギュラー）
『象印歌のタイトルマッチ』
『スター漫才選手権』
『ドラフトクイズ』
『アップダウンクイズ』
『赤白パネルマッチ』（初代司会）
『インスピレーションクイズ』（2代目司会）
『歌のチャンピオン』
『サウンド・イン"S"』（司会）

ラジオ番組

『トリス・ジャズ・ゲーム』
『ロイ・ジェームスの意地悪ジョッキー』
『ロイ・ジェームスのミスタースポーツ』
『不二家歌謡ベストテン』（初代司会者）
『パックインミュージック』
『シントク・サテライトアワー』
『日産プリンス・ハイウエイスコープ』
『MBS日曜競馬』（司会）

CM

ダイハツ・ミゼットMP（1959年）
ブライボン
ダリヤハイニット（1963年）
浦島海苔
日産自動車（ナレーション）
日本石油（現・ENEOS）

参考文献

湯浅あつ子『ロイと鏡子』中央公論社、1984年。
小松久男編著『テュルクを知るための61章』明石書店、2016年。

関連リンク

ロイ・ジェームス - テレビドラマデータベース
ロイ・ジェームス - KINENOTE
ロイ・ジェームス - IMDb（英語）
『ロイ・ジェームス』 - コトバンク

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