歌川国次

歌川国次（うたがわ くにつぐ）

歌川国次（1800年 - 1861年）は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師です。初代歌川豊国に師事し、役者絵、合巻の挿絵、肉筆画など、幅広いジャンルで才能を発揮しました。

生涯

国次は寛政12年（1800年）に生まれ、本姓は中川、名は幸蔵といいました。桜松亭、一応斎という号も用いました。銀座四丁目に居を構え、文化8年（1811年）頃から嘉永年間にかけて作品を制作しました。また、凧絵も得意としていたと伝えられています。文久元年（1861年）、62歳で亡くなりました。

作風と作品

国次の作品は、役者絵や合巻の挿絵に優品が多く見られます。繊細な筆致と色彩で、当時の風俗や人物を生き生きと描き出しています。以下に代表的な作品を挙げます。

合巻
『書習廓文章』：徳亭三孝作、文化9年（1812年）刊行
『恋渡木曽桟』：古今亭三鳥作、文化10年刊行
『玉藻前化妝姿見』：扇舎梅幸作、文政5年（1822年）刊行
錦絵
「清水寺清玄・中村歌右衛門」：文化9年3月、江戸中村座『清水清玄面影桜』より
肉筆画
「団扇を持つ美人図」：東京国立博物館所蔵
「桜下遊宴図」：太田記念美術館所蔵
「七世市川団十郎隅田川渡舟図」：光記念館所蔵
「美人立姿」：那須ロイヤル美術館（小針コレクション）旧蔵
「江の島詣で図」：ライデン民族学博物館所蔵
「雪の三囲図」：ライデン民族学博物館所蔵

これらの作品から、国次が美人画や風俗画にも才能を発揮していたことがわかります。特に肉筆画は、その繊細な描写と豊かな色彩が評価されています。

参考文献

日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年
『小針コレクション　肉筆浮世絵』（第五巻）　那須ロイヤル美術館、1989年
『秘蔵浮世絵大観9　ライデン国立民族学博物館』　講談社、1993年

歌川国次は、初代豊国の画風を受け継ぎながらも、独自の表現を追求した浮世絵師でした。彼の作品は、江戸時代の文化や風俗を今に伝える貴重な資料となっています。

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