歌沢寅右衛門 (うた沢)

歌沢寅右衛門の名跡

歌沢寅右衛門（うたさわ とらえもん）は、うた沢節に名を連ねる重要な流派であり、それぞれの代で受け継がれてきた伝統と成果があります。そのルーツは初代の歌沢笹丸に始まり、以降、代を重ねるごとに多くの音楽家たちがこの名跡を継承してきました。

初代：歌沢笹丸

歌沢笹丸の本名は笹本彦太郎で、1797年に本所南割下水に生まれました。彼は旗本という家庭に生まれ、幼少期から小唄に親しんでいました。1840年、彼は家督を養子に譲り隠居しました。その後、愛好者たちを集めるようになり、歌沢の名は次第に広がっていきました。安政4年、嵯峨御所の許しを得て「歌沢絃三」という名を授かり、同年に病没しました。

二代：平田虎右衛門

二代目は平田虎右衛門であり、1813年に生まれました。彼は江戸、日本橋の畳職人として生活しながら、当時流行していた小唄に目覚めます。そして「橘町平虎」という名で名声を博しました。虎右衛門は安政2年に歌沢流派の創設を志し、形式上は初代の笹本が家元となるも、最終的には彼が二代目を襲名しました。

文久2年、虎右衛門は顕彰碑を建立し、笹丸を讃えましたが、無許可であったため人間関係のトラブルを招くことにもなりました。

三代：平田かね

三代目は平田かねで、1838年に誕生しました。彼は二代目の実子で、丸山伝右衛門などの支援を受けました。最初は歌沢美知の名で活動していましたが、1881年に三代目虎右衛門を襲名しました。彼は古典音楽に優れた実力を持つ一方で、晩年は経済的に困窮することもありました。彼の娘にあたるゆきが後に四代目を継承しました。

四代：平田ゆき

四代目は平田ゆきで、1872年に生まれました。父親である三代目の後援者からの影響も強く、彼女は明治38年に四代目を襲名しました。虎という字が嫌だったため、名の表記を「虎右衛門」から「寅右衛門」に変えました。東京に戻った後、寅派を復活させる活動を行い、後に名跡を長女に譲ることで隠居生活に入りました。1943年に死去しました。

五代：平田秀子

五代目は平田秀子で、1901年に東京に生まれました。四代目の娘として、自然と音楽に親しみ、若い頃から母の指導のもとで修行に励みました。彼女は寅秀の名で活動し、1927年に五代目寅右衛門を襲名しました。

六代：平田守

六代目は五代目の実子で、本名は平田守です。彼は劇団青年座に所属する俳優として活動し、歌澤寅右衛門の名を名乗っています。伝統を受け継ぎ、現代においても歌沢流派の名を広める努力を続けています。

各代の歌沢寅右衛門は、いずれもそれぞれの時代背景や文化に根ざした活動を展開し、音楽界において重要な役割を果たしてきました。彼らが紡いできた歴史は、現代にも息づく貴重な伝承となっています。

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