正税

正税の概要

正税（しょうぜい）または大税（たいぜい）は、日本の律令制度において重要な収入源であり、田租や出挙から得られた米穀を指します。これらは国衙や郡衙の倉庫に保管され、備蓄や出挙の元本、そして地方行政の運営に使用されました。734年に正式名称として認定された正税は、当時の社会経済における重要な機能を果たしました。

正税の利用目的

正税は、さまざまな目的に利用されました。まず、出挙本稲としての役割があり、利息は正税の増加として考慮されました。また、正税の収入は不動穀として倉庫に貯蔵されることが理想とされ、年間収穫量の30年分を確保することが期待されていました。さらに、地方行政の経費や官人の給与にも充てられ、中央政府への貢納品の購入や運送費用にも使用されました。大嘗会や神宮式年遷宮のための資金源としても重要でした。これらの支出により、正税の収入は適切に管理され、地域社会の安定に寄与しました。

正税の歴史的背景

正税の原型は「大税」と呼ばれ、691年の飛鳥浄御原令に見られます。その時期、正税と関係する郡稲や過去の租税制度との関連性についての研究は多くありますが、明確な因果関係は不明です。大宝律令の制定を経て、大税は民部省の管理下に入り、708年には不動穀が制定されました。734年には郡稲等が統合され、正税として正式に認識されるようになり、以降「大税」という名称は使われなくなりました。この時期、正税の豊かさを示すエピソードとして、740年に不動穀が腐敗した事例があります。これにより、古い穀物の入れ替え命令が発令されました。

正税の崩壊

しかし、744年以降、国分寺や国分尼寺の整備に伴い、それぞれの令制国から正税を引き出すことが命じられました。続く翌年からは、多くの国が自国の収入につながる官稲の出挙に力を入れるようになりました。これにより、地方財政は充実したものの、正税の管理は疎かになってしまいました。中央政府は不動穀の豊富さに目を付け、本来上供するべき経費を正税から得ようとし、豊富な正税が中央に運ばれるようになりました。

その後も地方政治の腐敗や神火による正倉の焼失などが重なり、正税の不足が進行しました。平安時代に入ると、朝廷は正税の不足を補うための政策を導入しましたが、律令制の衰退によって未納が重なり、結果的に平安時代中期には正税制は事実上崩壊するに至りました。

まとめ

正税は、日本の律令制において重要な役割を果たしましたが、時間の経過とともにその制度は変化し、最終的には衰退していくこととなりました。この歴史的な流れの中で、正税が経済及び地方行政にどのように寄与していたのかを学ぶことは、当時の日本社会を理解する手助けとなるでしょう。

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