武井守成

武井守成（たけい もりしげ）：日本の音楽と儀礼を彩った男爵

武井守成は、1890年（明治23年）に生まれ、1949年（昭和24年）に没した、日本の作曲家、指揮者であり、男爵の爵位を持つ宮内官僚でした。彼は、音楽と儀礼の両分野で重要な役割を果たし、日本の文化に深い足跡を残しました。

生い立ちと教育

武井守成は、元姫路藩士で貴族院議員を務めた武井守正の次男として、鳥取県で誕生しました。幼少期から高い教育を受け、東京高等師範学校附属小学校、東京高等師範学校附属中学校（現在の筑波大学附属中学校・高等学校）を卒業しました。その後、東京外国語学校（現在の東京外国語大学）イタリア語科に進学し、首席で卒業。イタリアに留学し、語学だけでなく、音楽にも触れる機会を得ました。

宮内省での活躍

帰国後の1917年、武井守成は宮内省に入省し、式部官として宮中の儀式や典礼に携わりました。その後、楽部長を兼任し、宮廷音楽の発展にも貢献しました。式部職儀式課長を経て、1941年には式部次長に就任。1945年には式部長官（後に式部頭）となり、1947年までその任を務めました。宮内省での長年の勤務は、彼の高い能力と責任感を示すものでした。

作曲家としての活動

武井守成は、作曲家としても傑出した才能を発揮しました。特にマンドリン音楽の分野では、数多くの作品を残し、日本のマンドリン音楽の発展に大きく貢献しました。イタリア留学中にギターとマンドリンに魅せられ、帰国後にはマンドリンオーケストラ『シンフォニア・マンドリニ・オルケストラ』（後の『オルケストラ・シンフォニカ・タケヰ』）を設立し、自ら指揮を執りました。彼は、マンドリン合奏曲やギター独奏曲の作曲家として、情熱的に活動し、その作品は多くの人々に愛されています。

また、武井は雑誌『マンドリンギター研究』を発刊し、マンドリン合奏コンクールや作曲コンクールを開催するなど、マンドリン音楽の普及と発展に尽力しました。彼の音楽への情熱は、後進の育成にも注がれ、その遺産は今もなお、多くの音楽家に影響を与え続けています。

栄典と受賞

武井守成は、その功績を認められ、数々の栄典を授与されています。1927年には従四位、1937年には勲三等瑞宝章を受章し、1940年には従三位に叙せられました。また、外国勲章としてフランス共和国ドラゴンドランナン勲章オフィシエも受けています。これらの栄典は、彼の業績が国内外で高く評価されていたことを物語っています。

家族と系譜

武井守成は、住友喜三郎の長女ふじを母に持ち、公爵岩倉具定の四女花子を妻に迎えました。また、子息には守久がおり、長女昭子、二女直子をもうけました。武井家は、父の守正から続く男爵家であり、その系譜は日本の歴史と深く結びついています。

作品一覧（一部）

武井守成は、マンドリンオーケストラ曲、ギターアンサンブル曲、マンドリン独奏曲、ギター独奏曲、歌曲、合唱曲、流行歌など、多岐にわたるジャンルの作品を残しました。以下に代表的な作品をいくつか紹介します。

マンドリンオーケストラ曲

黄昏 Op.6 (1921年)
朝の前奏曲 Op.10 (1925年)
踊る小花 Op.14 (1925年)
幻想曲「朝鮮の印象」Op.20 (1926年)

ギター独奏曲

幼き時の思い出 Op.1 (1919年)
野遊び Op.2 (1919年)
ホ調のミヌエット Op.5 (1921年)
タルレガに捧ぐる曲 Op.7 (1921年)
春灯の下 Op.75（1943年）

歌曲

秋の色 Op.60（1941年、高田三九三詞）

合唱曲

秋三題 Op.113（1948年、高田三九三詞）

流行歌

丸の内メロディ（1929年、時雨音羽詞）

晩年と遺産

武井守成は、1949年にその生涯を閉じましたが、彼の音楽は今もなお、多くの人々に愛されています。彼の功績を記念して、1952年にはギター作品を対象とする武井賞が創設され、現在もギター音楽界の発展に貢献しています。武井守成は、音楽家、官僚としての偉大な功績に加え、その人間性においても多くの人々に敬愛されました。彼の残した作品と精神は、日本の文化遺産として、後世に語り継がれていくでしょう。

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