武周

武周（690年 - 705年）

武周は、武則天が唐に代わり建立した王朝です。先秦時代の周朝や南北朝時代の北周などと区別するため、武周或いは南周とも呼ばれます。武則天は中国の歴史上唯一の女帝として知られています。

建国と武則天の即位

690年、武則天は唐を簒奪し、自ら皇帝に即位しました。国号を「周」と定め、都を洛陽に置きました。彼女は仏教を重視し、自らを弥勒菩薩の生まれ変わりと称するなど、宗教的な権威も利用して自らの地位を正当化しました。

武則天は、唐の宗室の挙兵を鎮圧した後、女帝の出現を予言する書物を流布させました。また、周代に存在したとされる「明堂」を宮城内に建造し、権威の強化を図りました。これらの準備を経て、彼女は天授元年（690年）に帝位に就き、自らを聖神皇帝と称し、元号を天授と改めました。元の皇帝であった睿宗は皇太子に格下げされ、姓を李から武に改められました。

治世

武則天は、老子を祖とする唐王朝とは異なり、仏教を重視しました。朝廷での席次を「仏先道後」に改め、寺院の造営や寄進を盛んに行いました。彼女は自らを弥勒菩薩の生まれ変わりと称し、そのことを記した『大雲経』を編纂させ、全国に大雲経寺を建立させました。

武則天の治世で最も重要な役割を果たしたのが、狄仁傑でした。彼女は彼の才能を高く評価し、宰相として重用しました。狄仁傑は的確な諫言を行い、武則天はそれを受け入れ、国内外の難題を解決しました。また、武則天は姚崇や宋璟といった有能な人材を見抜き、要職に抜擢しました。彼らは後の玄宗の時代に開元の治を支えることになります。武則天の治世後半は、狄仁傑らの推薦により多くの有能な官吏が登用され、政権基盤は安定しました。

滅亡

晩年、武則天が病に倒れると、宮廷内では唐の復興を望む声が高まりました。武則天は甥に帝位を譲ろうとしましたが、狄仁傑の反対により断念しました。705年、宰相の張柬之らは中宗を奉じてクーデターを起こし、武則天の寵愛を受けていた張易之・張昌宗兄弟を処刑しました。そして、武則天に退位を迫り、則天大聖皇帝の尊称を奉ることを約束しました。これにより、中宗が復位し、国号は再び唐に戻りました。

武則天の死後、彼女は高宗とともに乾陵に合葬されました。唐代の帝陵は盗掘に遭いましたが、乾陵だけは盗掘を試みた際に激しい雷雨に見舞われたため、無事だったと伝えられています。

武周は短命な王朝でしたが、中国史上唯一の女帝である武則天の存在は、後世に大きな影響を与えました。彼女の治世は、有能な人材の登用や社会の安定をもたらし、唐の繁栄の礎を築いたとも評価されています。

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