武家屋敷通り (仙北市)

武家屋敷通り：歴史と自然が織りなす美しい町並み

秋田県仙北市角館町に位置する武家屋敷通りは、古城山の山麓から南へ伸びる、歴史情緒あふれる通りです。かつて中・下級武士の屋敷が立ち並んだこの地は、黒漆喰の塀と、春の満開の枝垂桜が織りなす景観が最大の魅力。その美しさから「みちのくの小京都」とも称され、多くの観光客を惹きつけています。

歴史の息づく街並み

武家屋敷通りの歴史は、1590年（天正16年）、戸沢氏が角館城を築城したことに始まります。その後、秋田藩主佐竹義宣の弟である蘆名義勝が統治するも、河川の氾濫などの問題から、1620年（元和6年）に古城山の南側に新たな城下町が形成されました。蘆名氏断絶後の1656年（明暦2年）からは佐竹氏一族が200年以上にわたりこの地を治め、現在の町並みの基礎が築かれました。

通りに立ち並ぶ枝垂桜は、佐竹義隣の子・義明の妻が京都の実家から持ち込んだと伝えられています。その見事な姿は、1974年（昭和49年）に国の天然記念物に指定されるほど。これらの歴史的建造物と自然が一体となった景観は、1976年（昭和51年）、「角館町角館伝統的建造物群保存地区」として重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。また、1977年（昭和52年）には秋田魁新報社の新観光秋田三十景にも選ばれ、1994年には読売新聞社選定の「新・日本街路樹100景」にも選出されています。さらに、その歴史的価値と文化的意義から、手づくり郷土賞（昭和61年度、平成17年度大賞）も受賞しています。

武家屋敷通りの特徴

武家屋敷通りは、0.8キロメートルにわたって続く南北の通りで、その中心部には「枡形」と呼ばれる、城郭建築の技法を用いた独特の形状をした道路があります。この枡形は、城への侵入を防ぐための工夫と考えられています。

通り沿いには、多くの歴史的建造物が残されており、その中には、石黒家、青柳家、松本家、岩橋家、河原田家、小田野家など、市や県指定の史跡や文化財に指定されている屋敷も含まれます。これらの屋敷は、黒板塀や茅葺屋根など、当時の武家の格式を今に伝える貴重な建築物です。

現在、武家屋敷通りは、多くの観光客が訪れる角館町の中心的な観光地となっています。しかし、幹線道路であるため、交通量が多く、文化財の保全や交通環境の改善が課題となっています。そのため、代替路線の整備など、通過交通の排除に向けた取り組みが進められています。

アクセスと周辺情報

武家屋敷通りへのアクセスは、JR東日本秋田新幹線・田沢湖線、秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線の角館駅から徒歩約15分です。周辺には、大村美術館、平福記念美術館、角館樺細工伝承館、新潮社記念文学館などの観光スポットも点在し、歴史と文化に触れる旅を楽しむことができます。また、少し南側には、佐竹本家の直臣の侍町であった田町武家屋敷もあり、角館の歴史をより深く知ることができるでしょう。

武家屋敷通りは、歴史と自然が調和した美しい町並みと、そこに息づく歴史を感じることができる、魅力的な観光地です。春の桜の季節はもちろん、一年を通して訪れる価値のある場所と言えるでしょう。

もう一度検索