武寧王陵

武寧王陵：百済王の眠る場所、歴史を語る遺産

武寧王陵は、大韓民国忠清南道公州市に位置する宋山里古墳群を構成する古墳の一つです。この古墳は、百済の第25代王である武寧王と、その王妃の陵墓であるとされています。1971年、古墳群の排水設備工事中に偶然発見され、その保存状態の良さと出土品の豪華さから、大きな注目を集めました。

発見の経緯と概要

武寧王陵は、宋山里古墳群の他の古墳と同様に、百済が公州を都としていた時代に築かれたものです。古墳群には、王や王族の墓が約10基存在し、これまでに1号墳から7号墳までが発掘されています。1号墳から5号墳は石造りの横穴式石室構造ですが、武寧王陵と6号墳はレンガ造り（磚室墳）という特徴を持っています。

武寧王陵の発見は、1971年の排水設備工事中に偶然にもたらされました。この発見により、王墓が特定され、古墳から出土した墓誌（大韓民国指定国宝第163号）には、「寧東大将軍百済斯麻王、年六十二歳、 癸卯年（523年）五月丙戌朔七日壬辰崩到」と記されていました。この墓誌は、王の生没年を特定できる貴重な史料となっています。

特徴的な構造と出土品

武寧王陵は、王妃を合葬した磚室墳であり、その構造にも特徴があります。棺材には、日本にしか自生しないコウヤマキ（高野槙）が使用されていることが判明し、当時の日本と百済との交流を示すものとして大きな話題となりました。また、古墳からは、金環の耳飾り、金箔を施した枕・足乗せ、冠飾などの金細工製品、中国南朝から舶載された銅鏡、陶磁器など、約3000点近い華麗な遺物が出土しました。これらの出土品は、百済の高度な文化水準と国際色豊かな交流を物語っています。

仏教との関連

武寧王陵から発見された2つの墓誌石や副葬品からは、高句麗の徳興里古墳のように、被葬者の仏教信仰を立証するものは見つかりませんでした。しかし、金製冠飾・木机・足座などの装飾に用いられた忍冬唐草文や蓮華文は、中国南朝の仏教美術の粋を集めた「仏教に関係の深い文様」であり、当時の仏教文化の影響が見られます。また、墓室や羨道の側壁を飾る蓮華文塼には、「士 壬辰年作」の銘があり、隣接する6号墳でも「梁官品為師矣」の箆書銘が入った蓮華文塼が発見されています。これらのことから、王陵を飾った塼は、中国南朝梁の官瓦を模倣して作られたこと、そして壬辰年（512年）に製作が開始されたことがわかります。百済瓦当は、素弁八葉蓮華文を主体とした南朝様式が主流を形成しましたが、その起源をなすものが武寧王陵と6号墳の蓮華文塼であると考えられています。

周辺施設

武寧王陵と宋山里古墳の周辺には、出土した文物を展示する博物館・展示館があります。

国立公州博物館：出土した金製冠装飾など、多くの韓国国宝が展示されています。
熊津百済歴史館
* 宋山里古墳群模型展示館

これらの施設を訪れることで、武寧王陵から出土した遺物や、当時の百済の文化をより深く理解することができます。

武寧王陵は、百済の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。その発見は、百済史研究に新たな光を当て、当時の国際交流や文化の多様性を知る上で重要な役割を果たしています。

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