武昌起義

武昌起義：辛亥革命の狼煙

武昌起義（ぶしょうきぎ）は、1911年10月10日に清朝末期の湖北省武昌で発生した、新軍兵士たちの反乱です。この事件は、清朝の支配を終わらせ、中華民国の成立へと繋がる辛亥革命の幕開けとなりました。

事件の背景

19世紀末から20世紀初頭にかけて、中国は列強の侵略と国内の混乱に苦しんでいました。日[[清戦争]]での敗北は、清朝の弱体化を露呈させ、知識人や革命家たちの間で改革を求める声が高まります。

中国同盟会の結成

当初、立憲君主制を支持する改革派が主導権を握っていましたが、西太后による戊戌の政変で改革は頓挫。その後、帝政と清朝に幻滅した多くの人々が、革命を目指すグループを結成しました。1905年、孫文や宋教仁などの革命指導者たちは、東京で各グループの合併を協議し、中国同盟会を設立。彼らは清朝打倒と民主的な国家建設を目標に掲げました。

清朝は1906年に立憲政治を導入する動きを見せますが、実際には皇族の権力が強く、民衆の不満は高まるばかりでした。1911年には皇族内閣が組織され、立憲主義者たちの失望は決定的になります。

革命運動の広がり

同盟会は1911年3月以降、各地での決起を呼びかけていました。特に長江流域では、キリスト教の伝道活動を通じて革命思想が広がり、軍人たちも革命結社に加入。武昌起義の前夜には、新軍兵士の中に革命を支持する者が多数存在していました。

保路運動と四川出兵

清朝末期、外国からの鉄道建設投資が増加する中、清朝は財政難を打開するため、1910年に鉄道路線を国有化する政策を打ち出しました。しかし、この政策は四川省や広東省などの地方資本家たちの激しい抵抗を招き、各地で「保路運動」と呼ばれる反対運動が起こります。

特に四川省では、地元資本家や地主が株式を保有していたため、国有化は彼らにとって重大な損失でした。1911年8月には、大規模なストライキや集会が発生。清朝は武力でこれら抵抗運動を抑圧しようとしましたが、かえって民衆の反感を買う結果となりました。

清朝は保路運動を鎮圧するため、湖北新軍の一部を四川省に派遣し、武昌の守備兵力が手薄になったことが、後に蜂起を誘発する要因となりました。

事件の経過

蜂起の前兆

武漢には文学社と共進会という二つの革命グループが存在しており、両者は連携して武漢での蜂起を計画していました。当初、蜂起は10月6日に予定されていましたが、準備不足のため延期されました。

しかし、10月9日、漢口のロシア租界で爆弾が誤爆し、革命活動家である孫武が負傷。病院で身元が判明したことで、革命計画が清朝当局に露見する危機が迫ります。

新軍の反乱

10月10日、文学社の蒋翊武は決起を決定しますが、計画が事前に漏洩。清朝当局は革命派の逮捕を開始し、同日には幹部を含む多数の革命派が逮捕、処刑されます。これにより、新軍内部には動揺が広がり、逮捕される恐れから、兵士たちは一斉に蜂起へと踏み切りました。

10月10日夜、金兆龍と程定国という2名の兵士が上官を射殺したことをきっかけに、熊秉坤率いる工兵中隊が蜂起。他の部隊もこれに呼応し、武昌城内に突入。激しい戦闘の末、総督は租界へ逃亡、翌日には武昌全域が反乱軍の手に落ちました。

湖北軍政府の設立

10月11日、反乱軍は湖北軍政府を設立し、新軍の高級将校だった黎元洪を都督（トップ）に就任させました。黎元洪は最初は反乱に反対していましたが、最終的に説得を受け入れ、その後の革命運動を主導することになります。軍政府は、外国勢力に干渉しないことを確認し、他省にも蜂起を呼びかけました。

革命軍は、10月12日には漢口と漢陽を占領し、10月13日には漢口領事団は革命軍を交戦団体として承認し中立を宣言。10月18日には、政府軍との間で激しい戦闘が行われましたが、革命軍が優勢に戦いを進めました。

陽夏の戦い

武昌起義の発生を受けて、清朝は北洋軍の袁世凱に鎮圧を要請。北洋軍は武昌に進軍しますが、革命軍も抵抗。11月初めには、黄興が武漢に到着し指揮を執りますが、北洋軍は11月1日に漢口を、11月27日には漢陽を奪回します。しかし、その後の攻勢は止まりました。

この背景には、袁世凱が革命軍と秘密裏に交渉を進めていたことがありました。

その後

武昌起義は、多くの革命指導者にとって予想外の出来事であり、黄興や宋教仁は事件には間に合いませんでした。孫文は海外で資金集めを行っている最中であり、蜂起を新聞で知ることになりました。

武昌の成功を受け、各地の省が清朝からの独立を宣言し、1911年12月末までには18省が独立を表明。1912年1月1日には、中華民国が成立し、孫文が初代大総統に就任します。

その後、孫文は袁世凱と交渉し、袁世凱に大総統の地位を譲ることで清朝を退位させることに成功。1912年2月12日、隆裕皇太后が皇帝溥儀の名で退位を発表し、ここに清朝は滅亡しました。

武昌起義の発生日である10月10日は、中華民国では国慶日（双十節）として祝われています。

参考文献

張秀平 毛元佑 黄朴民《影響中国的100次戦争》
北一輝『支那革命外史』1914年
鈴江言一『孫文傳』1930年
Bergère, Marie-Claire; Lloyd, Janet (1998). Sun Yat-sen. Stanford: Stanford University Press.
Esherick, Joseph W.; Wei, C.X. George (2013). China: How the Empire Fell. New York: Routledge.
Gao, James Zheng (1997). Meeting technology's advance: social change in China and Zimbabwe in the railway age. Greenwood Publishing Group.

参照項目

辛亥革命武昌起義記念館
辛亥革命博物館

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