武漢国民政府

武漢国民政府とは

武漢国民政府は、1926年から1927年にかけて、現在の湖北省武漢市に存在した国共合作による政権です。単に武漢政府とも呼ばれます。

成立の背景

1926年、蔣介石率いる国民革命軍が北伐（北進政策）を進める中で武漢を占領しました。同年12月、汪兆銘ら国民党左派が共産党と提携し、広州国民政府（広東政府）が広州から武漢へ遷都したことで、武漢国民政府が成立しました。

孫文の死後、後継者となった汪兆銘は、広東で国民政府常務委員会委員長と軍事委員会主席を兼任し、中国国民党右派を排除し、毛沢東ら中国共産党の党員も参加していました。広州国民政府は、国民党が直接掌握し、政治・軍事・財政・外交を統括する機関として、全国統一政権の規範となるものでした。

上海クーデターと国共分裂

しかし、1927年4月、蔣介石ら国民党右派が上海クーデターを起こし、南京国民政府を樹立して共産党を弾圧したことで、武漢国民政府との対立が激化しました。経済不安や土地革命を巡る共産党との対立から、武漢政府も同年7月に反共方針を明確化し（国共分離）、同年9月には南京政府に合流しました。

中山艦事件

国共両党間の主導権争いが続く中、1926年3月20日に蔣介石が共産党員を逮捕し、ソビエト連邦顧問団の住居を包囲する中山艦事件を起こすと、汪蔣間の対立が激化しました。この事件によって、蔣介石は国民政府連席会議において軍事委員会主席に選ばれ、党や軍における権勢を拡大させました。

汪兆銘の変心

当初、汪兆銘は共産党との協調路線を維持しようとしましたが、スターリンからの訓令が中国の主権を大きく侵害する内容であったため、共産党への強い警戒心を抱き、反革命の立場へと転じました。そして、7月に入って共産党と絶縁し、武漢にて清党工作を進めました。

武漢政府の瓦解

「反共産党」の立場で汪と蔣の意見が一致したことから、武漢政府と南京政府の再統一が模索されました。蔣介石が一時的に下野することを条件に両政府は合体することとなり、1927年9月、武漢政府は瓦解し、南京国民政府に合流しました。

その後

武漢国民政府は短命に終わりましたが、その成立と崩壊は、中国国民党内部の対立、国共合作の終焉、そしてその後の中国の政治に大きな影響を与えました。

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