武田光和

武田光和：安芸武田氏を背負い、戦乱に散った武将

武田光和（たけだ みつかず）は、戦国時代の武将であり、安芸武田氏の当主として知られています。父は同じく武将であった武田元繁であり、熊谷元直の娘を正室としました。官位は刑部少輔、安芸守。通称は太郎、別名として光貞（みつさだ）の名も伝わっています。

若き当主の苦難

永正14年（1517年）の有田中井手の戦いにおいて、父・元繁が戦死したため、光和は家督を継承しました。しかし、この戦いでは重臣である熊谷元直や香川行景も討ち死にしており、さらにその2年前には元直の父・熊谷膳直も亡くなっていたため、安芸武田氏は多くの重臣を失い、衰退へと向かいます。光和自身は武勇に優れた人物であり、尼子氏を支持して大内氏や毛利氏と争いましたが、父の時代の勢いを取り戻すことはできませんでした。

佐東銀山城の戦い

大永4年（1524年）、大内義興・義隆親子が3万余の大軍を率いて光和の居城である佐東銀山城を包囲しました。これに対し、尼子経久が救援のために急行し、安芸の尼子配下の国人衆にも出動を命じたため、銀山城は陥落を免れ、大内軍は撤退しました。この戦いにおいて、光和は自らも兵士と共に最前線で戦ったと伝えられています。

衰退と苦悩

光和は厳島神主家の後継者争いに介入し、大内氏と対立する友田上野介を支援するなど積極的に活動しましたが、安芸武田氏の衰退を食い止めることはできませんでした。さらに、家臣であった熊谷信直が所領を巡って離反したことは、安芸武田氏にとって大きな痛手となりました。信直の離反は、光和と正室（信直の妹）との不仲が原因であるとも言われています。天文2年（1533年）には、熊谷信直の居城・三入高松城を攻めましたが、守りは堅く撤退を余儀なくされました。

突然の死、そして

熊谷信直の討伐を再び試みていた天文9年（1540年）、光和は37歳という若さで急死しました。嫡男がいなかったため、同族の若狭武田氏から武田信実が迎えられましたが、安芸武田氏の衰運は決定的となりました。

光和の菩提寺は不動院（安芸安国寺）であり、同寺には武田刑部少輔の墓があります。また、庶子の武田小三郎は毛利氏に仕えて周防武田氏を名乗り、周防源氏武田家屋敷跡には光和の墓も建てられています。これは、佐東銀山城付近にあった墓と遺骨を移したものと伝えられています。

安芸武田氏の当主として、激動の時代を懸命に生きた武田光和。その生涯は、戦国時代の武将の苦悩と、時代の流れに翻弄される一族の姿を象徴していると言えるでしょう。

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