佐東銀山城

佐東銀山城（武田山城）

佐東銀山城は、現在の広島市安佐南区に位置する武田山（標高410メートル）山頂に築かれた山城です。別名、銀山城とも呼ばれ、「銀山城跡」として広島県の史跡に指定されています。

概要

武田山山頂を中心に、周辺の尾根に50以上の曲輪が連なる巨大な連郭式山城です。堀切や巨岩を利用した御門跡など、初期の城郭の特徴が見られます。自然の地形を巧みに利用しており、大規模な造成は少ないのが特徴です。周辺には支城や寺社が配置され、一体となって防衛網を形成していました。

沿革

鎌倉時代～室町時代

鎌倉時代初期、この地は市場や港町として栄え、安芸国の経済・流通の中心地でした。承久の乱後、武田信光が安芸国佐東郡を与えられ、武田山の麓に守護所を構えました。元寇や幕末の政情不安により戦乱の気配が漂う中、正安元年（1299年）には桜尾城主・平員家の攻撃を受け落城。その後、武田信宗によって武田山頂上域に城郭が築かれたとされています。
室町時代には、周防国の大内氏との間で激しい攻防戦が繰り広げられました。

戦国時代

永正14年（1517年）、安芸武田氏の当主・武田元繁は、毛利氏の西隣に位置する吉川氏を攻めましたが、有田中井手の戦いで毛利元就率いる毛利軍に敗れ、討死。これにより安芸武田氏は衰退の一途をたどります。
天文10年（1541年）、毛利元就は吉田郡[[山城]]の戦いで尼子氏を破り、同年、佐東銀山城を攻略しました。この際、元就が夜間に火をつけた草鞋を太田川に流し、城内の武田氏を撹乱したという逸話が残っています。その後、大内氏の家臣である冷泉隆豊が城番として配置されました。

毛利氏の支配

天文23年（1554年）、毛利元就は厳島の戦いの前哨戦として佐東銀山城を攻略。大内氏の城番であった栗田肥後入道は説得に応じ開城し、城は毛利氏の支配下に入りました。その後、関ヶ原の戦いまで毛利氏の支配下に置かれましたが、毛利元就の隠居城として実際に使用されることはありませんでした。広島城築城後は重要性が低下し、毛利氏が移封されると廃城となりました。

江戸時代以降

江戸時代以降も城跡は荒らされることなく、現在は地域住民による保全活動によって維持・整備され、ハイキングコースとして親しまれています。

逸話

安芸武田氏滅亡の際、残党が再起を図るための資金として、純金の茶釜を武田山中の洞窟に埋め、目印として白南天を植えたという伝説があります。また、この山はかつて金銀を産出したとされ、「銀山」の名もそれに由来すると言われています。武田山の真北には石見銀山が、真南には武田氏が甲斐から勧請した宇品・神田神社が位置しています。

現在、山城の登山道入り口には広島経済大学と広島県立祇園北高等学校があり、祇園北高校の校章には武田菱があしらわれています。また、地域のゆるキャラとして、武田山のお殿様をイメージした「たけちゃま」が存在します。

略年譜

文永11年（1274年）：武田信時、元軍に備え安芸国へ下向。佐東銀山城を築城。
正安元年（1299年）：桜尾城主・平員家の攻撃により落城。現在の城域に移転、築城。
永正13年（1516年）：武田元繁、安芸国内七郡の探題となる。
永正14年（1517年）：武田元繁、有田城を攻めるも敗死（有田中井手の戦い）。
大永4年（1524年）：大内義興、安芸武田氏を攻撃。佐東銀山城を包囲するも尼子氏の援軍により撤退。
享禄元年（1528年）：大内義隆、安芸武田氏を攻撃。佐東銀山城を包囲するも撤退。
天文2年（1533年）：武田光和、家臣・熊谷信直と絶縁。熊谷氏の居城・三入高松城を攻めるも敗北（横川表の戦い）。
天文9年（1540年）：尼子詮久、毛利元就の本拠地・吉田郡[[山城]]を攻めるも敗北。翌年撤退（吉田郡[[山城]]の戦い）。
天文10年（1541年）：武田信実、孤立した佐東銀山城を放棄し出雲国へ逃亡。安芸武田氏滅亡。大内義隆が佐東銀山城に城番として冷泉隆豊を置き管理。
天文24年（1555年）：毛利元就、佐東銀山城を奪取（厳島の戦い前哨戦）。福井元信が城番を務める。
天正19年（1591年）：広島城が完成。
慶長5年（1600年）：関ヶ原の戦い。毛利氏の防長移封に伴い佐東銀山城は廃城。
1956年（昭和31年）：広島県の史跡に指定。

支城

南御所：安芸武田氏初期支配時の政庁
尾首城
伴城（岸城、岸古城）：城主は武田氏一門の伴氏
伴北城
伴東城
伴支城：出城的性格の城
尾越城
* 国重城：城主は国重氏

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